No.100デザインレビューの開催条件、判断基準が明確でない運用について

ISO 13485投稿者: 2026年8月21日 06:59
1.デザインレビューとして最低限定義すべき「成立条件・完了条件」は何か 2.審査資料が正式な版でなく、正式版への反映・承認・トレーサビリティはどの程度必要か、また不要か? 3.未解決事項を残したまま次工程へ進めている場合、どのような管理が必要か、また対応は特に不要か? 4.評価用サンプル製造(設計検証や妥当性確認)や設計移管へ進む前に、設計アウトプットとして最低限確定しているべき事項は具体的に何か。 また評価計画もないまま製造を先行させて後で計画する運用でも問題はないのか? 5.QMS適合性調査で特に確認されやすいポイントは何か 以上の5点について、ご教示下さい。 宜しくお願いします。
公式回答株式会社イーコンプライアンス2026年8月22日 08:31

デザインレビュー(DR)の開催条件・判断基準の明確化について

結論(5つのご質問への要旨)

ご質問 結論(要旨)
1. 成立条件・完了条件 「開催してよい状態か(エントリー条件)」と「合格として次工程へ進めてよいか(イグジット条件=判定基準)」を、設計開発計画書とDR手順書に事前に定義することが必要です。判定基準のないDRは、QMS省令第33条(設計開発照査)が求める「体系的な照査」を満たしていると説明しにくく、不適合指摘のリスクが高くなります。
2. 審査資料の版 ドラフト(未承認版)でのDR開催そのものは禁止されていません。ただし「DRで審査した版の特定」と「正式版への反映・承認」は必須です。「トレーサビリティ不要」という運用は、文書管理(QMS省令第8条/ISO 13485 4.2.4)および設計出力の承認(QMS省令第32条/ISO 13485 7.3.4)の観点から不適合となり得ます。
3. 未解決事項の持ち越し 「識別した問題を、記録も追跡もせずに放置する」という意味での対応不要はあり得ません。一方で、重要度に応じ「記録のみ」とする判断はあり得ます。重要なのは、分類・責任者・期限・次工程進行可否の根拠を記録し、クローズを追跡することです。
4. 次工程移行前の確定事項 設計出力(仕様・図面・受入基準・安全上不可欠な特性・リスク管理等)が承認済みでベースライン化されていること、そして検証/バリデーションの計画書が実施前に承認されていることが必要です。「試験をやってから計画書を作る」運用は、QMS省令第34条・第35条およびISO 13485 7.3.6/7.3.7の要求に反します。
5. 適合性調査で見られる点 「照査の実施要領(手順)の有無」「計画と実績の一致」「照査記録と講じた措置の記録」「未解決事項のクローズ」「計画書の承認日と試験実施日の前後関係」「設計変更管理」が定番の確認ポイントです。

以下、初心者の方にも分かるよう、用語整理 → 根拠条文 → 各ご質問への回答、の順にご説明します。

なお本回答では、規制で明示的に要求されている事項には【必須】、弊社の実務経験に基づく推奨事項には【推奨】のラベルを付け、区別できるようにしています。


0-1. まず用語を整理します

設計管理では似た用語が並び、混同されやすいため、最初に関係を整理します。

用語 意味(かみ砕くと) 主な根拠条項
設計開発照査(デザインレビュー/DR) 設計の節目ごとに、関係部門が集まって「この設計で次に進んでよいか」を組織として審査・判定する活動 QMS省令第33条/ISO 13485 7.3.5
設計開発の検証(Verification) 設計出力が設計入力(要求仕様)を満たしているかを、試験・解析・比較等で確認すること(=「仕様どおりに作れたか」) QMS省令第34条/ISO 13485 7.3.6
設計開発バリデーション(妥当性確認) でき上がった製品が、実際の使用条件(またはそれを模した条件)で意図した用途を満たすかを確認すること(=「使って役に立つか」) QMS省令第35条/ISO 13485 7.3.7
設計移管 設計成果物を製造部門・品質保証部門へ、製造仕様として正確に引き渡すこと QMS省令第35条の2/ISO 13485 7.3.8
DHF(Design History File/設計開発に係る記録簿) 設計の全経緯を示す記録の束 QMS省令第36条の2/ISO 13485 7.3.10

※ 「照査」は法令上の用語で、実務上の「デザインレビュー(DR)」と同義とお考えください。


0-2. 根拠となる規制要求(条項番号)

ご質問に関係する主な条項です。QMS省令の設計開発関連条文は、2021年(令和3年)改正後、以下の番号になっています。

規制 条項 要求の要旨
QMS省令(医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令、平成16年厚生労働省令第169号) 第30条(設計開発)=計画を含む
第31条(設計開発への入力)
第32条(設計開発からの出力)
第33条(設計開発照査)
第34条(設計開発の検証)
第35条(設計開発バリデーション)
第35条の2(設計移管業務)
第36条(設計開発の変更の管理)
第36条の2(設計開発に係る記録簿)
各段階の照査・検証・バリデーションを計画に従って実施し、結果と講じた措置を記録する
QMS省令 第8条(品質管理監督文書の管理)、第9条(記録の管理) 文書の承認・改訂・版の識別・最新版の利用可能性を管理する
ISO 13485:2016 7.3.2〜7.3.10 上記に対応。特に7.3.6/7.3.7で「方法及び許容基準を含む検証/バリデーション計画を文書化する」ことを明記
米国 21 CFR Part 820(QMSR。2026年2月2日施行済み) Part 820(ISO 13485:2016を法令に取り込む形式) 米国向けに製造販売する場合に適用

※ QMS省令の条文は、e-Gov法令検索「医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令」(平成16年厚生労働省令第169号) で確認できます。

※ 施行通知は「医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令の取扱いについて」(令和3年3月26日 薬生監麻発0326第4号)です。本文は PMDA掲載PDF(薬生監麻発0326第4号) をご参照ください。検証・バリデーションの計画文書化など、条文の解釈が具体的に示されています。

※ 米国の現行規則本文(QMSR)は eCFR 21 CFR Part 820 をご覧ください。米国向け製品がない場合は、以下のFDA関連の記述は参考情報としてお読みください。

※ ISO 13485:2016 の規格本体は ISO 13485:2016(ISO公式ページ) にあります(規格本文は有償)。


1. 【ご質問1】DRとして最低限定義すべき「成立条件・完了条件」

1-1. 出発点:DRは「説明会」ではなく「審査」

QMS省令第33条は、設計開発照査について概ね次のことを求めています。

  • 設計開発の結果が要求事項に適合するかどうかを評価すること
  • 設計開発に問題がある場合は、その内容を識別し、必要な措置を提案すること
  • 実施要領(手順)を文書化し、設計開発計画および当該実施要領に従って行うこと
  • 照査の結果および講じた措置の記録を作成し、保管すること

つまりDRは「評価(=適合しているかの判断)」を伴う活動です。判定基準がまったく定義されていない場合、「何をもって適合と評価したのか」を説明できず、実務上は不適合を指摘されるリスクが高くなります。

※ 「判定基準がない会議はDRではない」と明文で定めた条文があるわけではありません。しかし「評価した」と言うためには何らかの基準が必要であるため、基準の明文化を強くお勧めします。

1-2. 成立条件(エントリー条件)として定義すべき事項

区分 定義すべき内容 レベル 具体例
① 開催時期 どのステージ移行時にDRを行うか 【必須】計画への明記 企画DR/基本設計DR/詳細設計DR/検証完了DR/設計移管DR。回数・段階数は製品のリスクと規模に応じ各社で決定
② 審査対象 そのDRで審査する入力/出力の一覧 【必須】 「DR-2の審査対象:要求仕様書 Rev.B、リスク分析報告書 Rev.A、回路図一式」
③ 提出資料の状態 版(Rev.)と配付期限 【推奨】 「開催5営業日前までに版を固定して配付」
④ 参加者要件 参加すべき機能・専門家 【必須】(ISO 13485 7.3.5:当該段階に関わるすべての機能の代表者+必要な専門家) ME機器ならメカ・エレキ・ソフトの代表者。必要に応じ材料・生体適合性・医学等の専門家
⑤ 独立レビュアー 当該設計に直接責任を持たない者の参加 【推奨】(後述) 他プロジェクトの設計者、品質保証部門など
⑥ 前回DRの状態 前回の要処理事項のクローズ状況 【推奨】 「前回の必須項目がクローズ済み、または期限付きで承認済みであること」
⑦ 定足数・代理 成立に必要な出席者 【推奨】 「必須参加者が欠席の場合は延期。代理は事前指名者に限る」

⑤について補足します。旧FDA QSR 820.30(e) は「当該設計段階に直接責任を持たない者」の参加を明示的に要求していましたが、2026年2月2日施行のQMSRでISO 13485:2016を取り込んだ結果、この「独立レビュアー」という明示的な文言は規則本文には引き継がれていません(ISO 13485 7.3.5は「当該段階に関わる機能の代表者」と「専門家」を求めていますが、独立性は明記していません)。QMS省令にも同様の明文はありません。

したがって現在は【推奨】に位置づけられますが、思い込みや勘違いは当事者だけでは発見しにくいため、実務上は第三者性のある参加者を入れることを強くお勧めします。

1-3. 完了条件(イグジット条件=合否判定基準)として定義すべき事項

「合格」として次工程へ進めるための基準です。最低限、以下を明文化してください。

  1. 【必須】設計入力の妥当性が確認されていること(要求が完全・明確で、相互に矛盾がないこと:QMS省令第31条)
  2. 【必須】設計入力の各項目に対応する設計出力が存在し、追跡できること(トレーサビリティマトリクスでの確認は【推奨】手法)
  3. 【必須】当該段階で予定した検証結果が判定基準を満たしていること
  4. 【推奨】検証データのレビュー観点を手順書に列挙しておくこと
    • 機能・操作上の要求を満たすか
    • 構成部品・付属品との互換性
    • 安全性要求(IEC 60601-1、ISO 10993 等)の達成状況
    • 信頼性・保守性の要求
    • 表示・添付文書等の規制要求
    • 製造・据付け・保守の要求と設計仕様の両立
  5. 【必須】リスクマネジメント(ISO 14971)が当該段階まで実施され、リスクコントロールの状況と残留リスクの受容判断がレビューされていること
  6. 【推奨】判定区分(合格/条件付き合格/不合格・再審査)と判定権限者(一般に設計開発責任者+品質保証責任者)の規定
  7. 【推奨】未解決事項の扱い(ゼロ、または「次工程進行を妨げない」根拠が文書化されていること)

1-4. 記録として残すもの

  • 【必須】DR記録(実施日、審査対象の設計とその版、参加者の特定、照査の結果、必要な措置)
  • 【推奨】判定結果欄(合格/条件付き合格/不合格)と判定者の署名・日付
  • 【推奨】要処理事項一覧(フォローアップ表)
  • 【推奨】ステージ完了報告書

これらはDHF(設計開発に係る記録簿:QMS省令第36条の2)に綴じます。

補足として、規制は「文書単位のレビュー」を禁じているわけではありませんが、QMS省令第33条・ISO 13485 7.3.5が求めるのは設計の結果が要求事項に適合するかの体系的な評価です。個々の文書を別々に見るだけでは、入力と出力の整合や、メカ・エレキ・ソフト間の不整合を見逃しやすいため、実務上は横串で審査する設計をお勧めします【推奨】。


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2. 【ご質問2】審査資料が正式版でない場合の取扱い

2-1. 結論:ドラフトでのDRは可。ただし版の特定と正式版化は必要

「不要」という運用はお勧めできません。理由は次のとおりです。

  • QMS省令第8条/ISO 13485 4.2.4:文書は発行前に承認し、改訂を管理し、版を識別し、最新版が使用箇所で利用できるようにすることが求められます。
  • QMS省令第32条/ISO 13485 7.3.4:設計開発からの出力は、次の工程に引き渡す前に(リリース前に)承認されなければなりません。

つまり、ドラフトで議論すること自体は問題ありませんが、「どの版を審査したのか分からない」「指摘が正式版に反映されたか追えない」「正式版が承認されないまま次工程に進んだ」という状態は不適合となり得ます。

2-2. 実務上の推奨運用

状況 推奨される運用
ドラフト(Rev.0.x/Draft)でDRを実施する ・記録に「審査対象:要求仕様書 Draft Rev.0.3(2026-○-○版)」と版を必ず特定して記載
・判定は「条件付き合格:指摘反映のうえ正式版 Rev.1.0として承認すること」
・正式版発行時に、指摘事項がどこに反映されたかの対応表を添え、DR議長または判定権限者が確認・承認
正式版で内容が大きく変わった 再DR(差分DR)を実施。軽微な場合は手順書に定めた書面レビューで代替可(その判断基準を手順書に定義しておくこと)
正式版が発行されないまま次工程へ 不適合。未承認の設計出力に基づく検証・移管となるため、指摘対象です

2-3. 必要なトレーサビリティの水準

最低限、次の3本が追えれば十分と考えます。

  1. DR指摘 → 対応内容 → 反映先の文書名と版(要処理事項一覧で管理)
  2. ドラフト版 → 正式版(改訂履歴欄)
  3. 設計入力 → 設計出力 → 検証/バリデーション → リスクコントロール(トレーサビリティマトリクス)

※ 「全文書について詳細な差分記録を残す」ところまでは規制上要求されていません。過剰な文書化はかえって形骸化を招きます。第三者が「指摘が正式版に確実に反映された」と追える水準を目標にしてください。


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3. 【ご質問3】未解決事項を残したまま次工程へ進めている場合の管理

3-1. 結論:「識別した問題を放置し、記録も残さない」は不可

QMS省令第33条は、問題があるときはその内容を識別し、必要な措置を提案すること、そして照査の結果および講じた措置の記録を残すことを求めています。したがって、

  • 重要度に応じて「記録のみで、追加の是正措置は行わない」と判断すること自体はあり得ます(判断根拠を記録することが前提)
  • しかし「問題を挙げたが、その後どうなったか誰も追っていない」状態は、条文の要求を満たしません

という整理になります。ご質問の「対応は特に不要か」に対しては、後者の意味であれば「不要とはできません」というのが回答です。

3-2. 要処理事項一覧(フォローアップ表)に含めるべき項目【推奨】

項目 説明
通番/発生DR どのDRで出た指摘か
指摘内容 具体的な問題・懸念
分類(重要度) 例:A=次工程移行を阻む(必須クローズ)/B=次DRまでにクローズ/C=記録のみ(措置不要と判断、根拠を付記)
次工程進行への影響判定 「進行可/不可」とその根拠(リスク評価結果を含む)
対応責任者 個人名(部署名だけにしない)
期限 具体的な日付
対応内容・エビデンス 反映文書名と版、試験報告書番号など
クローズ判定者・日付 誰がいつクローズを承認したか

3-3. 「条件付き合格」で進める場合の要件

現実にはすべてをクローズしてから進むことが難しい場面もあります。次の条件を満たしていれば、調査時にも説明可能です。

  1. 手順書に「条件付き合格」という判定区分とその適用条件が事前に定義されている
  2. 未解決事項ごとに、次工程へ進むことによるリスクを評価し、受容可能と判断した根拠が記録されている(ISO 14971の枠組みで評価することを推奨)
  3. 期限と責任者が明記され、次のDRで必ずクローズ状況が確認される
  4. 「絶対に持ち越してはならない項目」が定義されている

持ち越してはならない項目の例:

  • 安全性・基本性能に関わる未解決の懸念(IEC 60601-1、ISO 10993 等の適合未確認)
  • リスクコントロール手段が未確定な残留リスク
  • バリデーションに用いる製品の仕様が未確定
  • 設計移管DR時点でのDMR(Device Master Record:機器原簿。日本では製品標準書等に相当)関連文書の未確定

※ 最も指摘を受けやすいのは「一覧表はあるが、多くが期限超過のままオープン」というパターンです。表を作ること自体より、クローズを追跡する仕組み(次回DRでの必須確認、月次レビュー等)が重要です。


4. 【ご質問4】評価用サンプル製造・設計移管の前に確定しているべき事項

4-1. 設計検証用サンプルの製造前に確定すべき設計出力

設計検証は「設計出力が設計入力を満たすか」の確認です。合否を判定する物差し(=入力と判定基準)と、検証対象(=出力)が確定していなければ、検証として成立しません。

# 確定しておくべき事項 レベル 備考
1 製品要求仕様書(設計入力) 【必須】 検証の判定基準の根拠。QMS省令第31条
2 部品表(BOM)・材料仕様 【必須】 生体適合性評価の前提
3 図面(機械・電気)、回路図、基板仕様 【必須】 版を固定
4 ソフトウェア要求仕様・アーキテクチャ・ビルド版数 【必須】(該当機器) IEC 62304に基づく
5 購入・製造・サービス提供に必要な情報(部品受入基準を含む) 【必須】 QMS省令第32条/ISO 13485 7.3.4 a)
6 製品の合格判定基準(Acceptance criteria) 【必須】 QMS省令第32条/ISO 13485 7.3.4 b)
7 安全上不可欠な特性(電源、警報、非常停止等) 【必須】 ISO 13485 7.3.4 d)
8 リスクマネジメントファイル(当該段階まで) 【必須】 ISO 14971
9 ラベリング・添付文書(案でも可。版管理は必須) 【必須】 表示に関する検証項目の根拠
10 検証用サンプルの製造条件・製造記録(ロット、材料、設備、作業者) 【推奨】だが実務上不可欠 「どの個体を試験したか」の特定に必要

4-2. 設計開発バリデーション用サンプルに追加で必要な事項

QMS省令第35条およびISO 13485 7.3.7では、概ね次のことが求められています。

  • 【必須】バリデーションは、実際の使用条件またはこれを模した条件の下で行うこと
  • 【必須】原則として製品の出荷(市場への引渡し)前に完了していること
  • 【必須】初期ロット、それに相当するバッチ、またはそれらと同等のもの(量産を代表する製品)を用いること。同等とする根拠を記録すること
  • 【必須】方法および許容基準を含むバリデーション計画を文書化すること

したがって、追加で以下が必要です。

  • 量産と同等の製造プロセス・設備・作業者・材料であることの根拠(同等性の説明文書)
  • 臨床評価またはユーザビリティ評価(IEC 62366-1)の計画(該当する場合)

4-3. 設計移管(QMS省令第35条の2)の前に確定すべき事項

設計移管は独立した条文(第35条の2「設計移管業務」)で規定されており、設計出力が製造仕様として適切であることを検証したうえで移管することが求められます。検証・バリデーション(第34条・第35条)の完了と整合していることが前提となります。

  • 製品標準書/DMR相当文書一式:製品仕様、製造工程仕様、品質保証手順と受入基準、包装・表示仕様、据付け・保守手順
  • 工程設計の完了(必要な場合はプロセスバリデーション計画:ISO 13485 7.5.6/QMS省令第45条)
  • 検証・バリデーションの完了と、残存する未解決事項のクローズ
  • 設計移管DRの合格判定と、設計内容が製造仕様へ「正確に転写された」ことを示す記録

4-4. 「評価計画がないまま製造を先行させ、後で計画する」運用の可否

結論を分けてご説明します。

(a) 設計検証/バリデーションと位置づける試験を、計画書なしに実施すること → 不適合です。

ISO 13485:2016 7.3.6は「組織は、方法及び許容基準を含む検証計画を文書化する。適切な場合、サンプルサイズの根拠とした統計的手法を含む」と規定しています。7.3.7も同旨です。QMS省令第34条・第35条およびその施行通知(薬生監麻発0326第4号)でも、検証・バリデーションに際して方法および判定基準を含む計画を文書化することが求められています。

問題点 説明
合否基準の後付け 結果を見てから基準を決めると、「結果に合わせて基準を緩めた」と疑われます(データインテグリティ上も重大)
サンプルサイズの根拠喪失 統計的妥当性が事後正当化となり、科学的根拠が説明できません
記録の同時性 ALCOA+原則の Contemporaneous(同時性)に反します
再現性の欠如 どの条件で製造・試験したか特定できず、逸脱の有無も判断できません

なお、過去データが直ちに「無効」と断定されるわけではありませんが、実務上は「正式な設計検証としてはカウントできない(参考データ扱い)」とされ、承認済み計画に基づく再検証を求められる可能性が高いとお考えください。

(b) サンプルの製造そのものを先行させること → 一律に不適合とは言えません。

ただし、次を満たしてください。

  • 製造条件・ロット・使用材料・設備・作業者の記録を残し、後から「どの個体か」を特定できるようにする【必須に近い実務要件】
  • 検証/バリデーションに使う場合は、設計出力(4-1の項目)が承認済みであること
  • 開発初期のフィジビリティ試験・探索的評価は簡易な計画で構いませんが、「これは正式な設計検証ではない」ことを文書上明示し、正式検証は承認済み計画書に基づいて別途実施する【推奨・要手順書定義】

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5. 【ご質問5】QMS適合性調査で特に確認されやすいポイント

QMS適合性調査(薬機法第23条の2の5第7項等に基づく調査)では、設計管理は最重点領域の一つです。調査の進め方は「QMS調査要領について」(令和6年6月12日 医薬監麻発0612第2号)に示されています(厚生労働省 法令等データベース:QMS調査要領について)。

5-1. 定番の確認ポイント

# 確認ポイント 想定される質問 準備すべき記録
1 設計開発照査の実施要領(手順)の存在 「照査の手順書はどれですか。合格基準はどこに書かれていますか」 DR手順書、設計開発計画書
2 計画と実績の一致 「計画ではDR5回ですが、記録は3回分です。計画変更の承認は」 計画書の改訂記録
3 参加者要件の充足 「ソフト担当者が欠席していますが成立しますか」 出席者リスト、代理承認記録
4 照査の結果と講じた措置の記録 「この指摘の措置はどうなりましたか」 要処理事項一覧、クローズ証跡
5 トレーサビリティ 「この設計入力はどの出力で実現し、どの試験で検証しましたか」 トレーサビリティマトリクス
6 計画の先行性 「試験計画書の承認日が試験実施日より後になっていますね」 計画書の承認日付と試験記録の日付
7 設計変更管理 「この変更は照査を経ましたか。リスク再評価は」 設計変更記録(QMS省令第36条/ISO 13485 7.3.9)
8 リスクマネジメントとの連携 「DRでリスクマネジメントファイルはレビューされましたか」 RMF、DR記録
9 設計移管の完了確認 「量産開始の判断は誰が何を根拠に行いましたか」 設計移管DR記録、製品標準書
10 ソフトウェアの取扱い 「ソフトウェアの検証・バリデーションはどこで実施しましたか」 IEC 62304関連記録

なお、PMDAや自治体が公表しているQMS適合性調査の指摘事例集でも、「設計開発照査の記録に、結果および必要な措置の記録が不十分」「設計開発計画に定めた照査が実施されたことを示せない」「未解決事項のフォローアップがなされていない」といった指摘が繰り返し挙げられています。

※ これらの事例集は自治体・PMDAの資料として公開されていますが、版が随時更新されるため、本回答では個別URLの記載は控えます。最新版を各機関のサイトでご確認ください。

5-2. 特に危険な「よくある指摘パターン」

  1. DR記録に判定欄がない:合否の記載がなく「議論した」という記録しかない。評価を行った証跡として弱いと判断されます。
  2. DR実施日より後の日付の資料が審査対象として綴じられている:版管理の破綻。後日差し替えたのではないかという疑義を招きます。
  3. 要処理事項が全件オープンのまま最終DRを通過している:次工程移行の判断根拠を説明できません。
  4. 検証報告書はあるが計画書がない/承認日が逆転している:QMS省令第34条、ISO 13485 7.3.6の明確な不適合。
  5. 設計変更が現場判断で行われ、照査を経ていない:QMS省令第36条の不適合。上市済み製品に及ぶ場合は、一部変更承認申請の要否にも波及します。

6. ソフトウェアを含む機器での留意点【推奨】

ソフトウェアを含む医療機器では、ハードウェアと節目が異なります。IEC 62304に沿って、次のような固有のレビュー節目を設計開発計画に織り込むことをお勧めします。

  • ソフトウェア要求仕様のレビュー(安全クラス分類の妥当性を含む)
  • アーキテクチャ設計レビュー(SOUP/既製ソフトウェアの特定と管理を含む)
  • 詳細設計・コードレビュー(安全クラスに応じて要否が変わります)
  • 統合試験・システム試験の結果レビュー
  • 未解決の不具合(アノマリー)一覧のレビューとリリース判定

特に「未解決の不具合を残したままリリースしてよいか」の判断は、リスクマネジメントと直結するため、ご質問3の枠組み(分類・根拠・期限)をソフトウェア側でも必ず運用してください。


7. 改善のための実務ステップ(ご提案)

ステップ1:手順書の整備(目安1〜2か月)

  • 設計開発手順書(またはDR手順書)に、1-2/1-3の項目を盛り込む
  • 判定区分(合格/条件付き合格/不合格)と、条件付き合格の適用条件を明記
  • 「まず最低限」を優先し、次の4点から着手することをお勧めします
    1. DRの開催段階と審査対象の明記
    2. 合否判定基準の明文化
    3. 記録に判定欄・審査資料の版・参加者を必須記載
    4. 要処理事項のクローズ追跡ルール

ステップ2:様式(テンプレート)の整備

  • DR開催通知書:エントリー条件チェックリスト付き
  • DR記録様式:判定欄・審査対象資料の版一覧・出席者欄を必須項目化
  • 要処理事項一覧様式:3-2の項目を含む
  • トレーサビリティマトリクス様式
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ステップ3:進行中案件への遡及対応

  • オープンな未解決事項を棚卸しし、リスク評価のうえ進行可否を再判定
  • 未承認のまま使われている設計出力を特定し、承認プロセスを完了させる
  • 計画書なしで実施済みの検証・バリデーションを洗い出し、「再実施が必要なもの」と「事後の科学的正当化で説明可能なもの」を仕分けし、その判断根拠を文書化する

ステップ4:教育訓練と有効性確認

  • 設計・品質保証部門への教育訓練(記録を残す)
  • 次回DRで新様式を試行し、内部監査でフォローアップ

おわりに

デザインレビューは、単なる会議体ではなく「その設計で次工程に進んでよいか」を組織として正式に意思決定する関門(ゲート)です。判定基準が不明確なままの運用は、規制上の指摘リスクだけでなく、後工程での手戻りや上市後の不具合という形で事業リスクに直結します。

まずは「合否判定基準の明文化」と「要処理事項のクローズ追跡」の2点から着手されることをお勧めします。

※ 本回答は一般的な解説であり、貴社の製品クラス、開発体制、仕向地(日本のみか、米国・欧州も含むか)によって必要な管理レベルは変わります。個別の手順書作成・改訂、既存記録の是正計画の策定につきましては、弊社にてご支援可能ですので、お気軽にお問い合わせください。

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