No.101日本における一般医療機器の広告について

医療機器規制全般投稿者: K2026年8月26日 12:29
日本において、一般的名称やその定義、使用目的または効果に「家庭」の語が含まれず、かつ令和3年厚生労働省告示第44号の別表にも記載されていない一般医療機器(クラスⅠ)について、当該機器が医師・歯科医師等の医療関係者が自ら使用することを目的としたものではなく、一般消費者による使用を想定した機器ある場合、これを一般消費者に販売するにあたり、一般消費者を対象とした広告を行うことは問題ないでしょうか。
公式回答株式会社イーコンプライアンス2026年8月26日 12:35

日本における一般医療機器(クラスⅠ)の一般消費者向け広告について

結論(3段階で整理)

  1. 原則:ご質問の2点(一般的名称等に「家庭」の語がない/令和3年厚生労働省告示第44号の別表に非掲載)は、一般消費者向け広告を禁止する根拠にはなりません。逆に、この2点だけで「広告してよい」と結論づけることもできません。
  2. 本質的な判断基準:一般消費者向け広告が制限されるのは、「医師若しくは歯科医師が自ら使用し、又はこれらの者の指導の下に使用することを目的として供給される医療機器」です(医薬品等適正広告基準)。ご質問の製品がこの類型に当たらず、かつ製造販売届出書の「使用目的又は効果」・一般的名称(JMDN)の定義・添付文書(注意事項等情報)の3点が「一般消費者の自己使用」で整合しているのであれば、一般消費者向け広告を行える可能性があります
  3. ただし:広告表現そのものが届出した「使用目的又は効果」の範囲を1文字でも超えれば、薬機法第66条(誇大広告等の禁止)違反となり得ます。可否は最終的に個別の広告表現ごとの審査事項です。

※ 個別製品の適否は行政判断となるため、所轄の都道府県薬務主管課(薬事監視・広告担当)への事前相談を強くお勧めします。


1. 用語の整理(初めての方向け)

用語 説明
薬機法 「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(昭和35年法律第145号)の略称。以下「薬機法」。
一般医療機器(クラスⅠ) 不具合が生じても人体へのリスクが極めて低い医療機器(薬機法第2条第7項)。承認・認証は不要で、製造販売届出(薬機法第23条の2の12)により上市できる。
一般的名称(JMDN) 医療機器を機能・使用目的で分類した名称。名称ごとに「定義」とクラス分類が定められている。
使用目的又は効果 届出・認証・承認で特定される「何のために・誰が・どう使うか」の記載。広告可能な範囲の上限となる。
家庭用医療機器 法令上の正式な区分ではなく、一般消費者が自ら(家庭等で)使用することを目的とする医療機器の通称。

参照:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)/e-Gov法令検索


2. まず押さえる「広告の3要件」

昭和55年10月9日 薬監第148号(厚生省薬務局監視指導課長通知)により、次の3要件をすべて満たすものが「広告」と判断されます。

  1. 顧客誘引性:顧客を誘引する(購入意欲を昂進させる)意図が明確であること
  2. 特定性:特定医薬品等の商品名が明らかにされていること
  3. 認知可能性:一般人が認知できる状態であること

自社ウェブサイト、ECモールの商品ページ、SNS投稿、カタログ、チラシ、パッケージの記載、展示会での説明動画なども、この3要件を満たせば広告に該当します。販売形態(店頭/EC/SNS)によって「認知可能性」の評価が変わる点にご注意ください。


参考動画
その表現、薬機法違反かも?NG広告表現の具体例をわかりやすく解説
広告に該当する表現の考え方を具体例で確認できます。

3. ご質問の2つの要件について

(1) 「家庭」の語が含まれないこと

一般的名称や使用目的に「家庭」の語があるかどうかは、判断材料の一つにすぎません。広告規制上の分かれ目は名称の文言ではなく、「誰が・どこで・何のために使う前提の機器か」という実質です。

(2) 令和3年厚生労働省告示第44号の別表に記載がないこと

同告示は、添付文書の電子化(注意事項等情報の提供方法)に関連して発出されたものと理解しております。すなわち、「情報提供の方法」に関する整理であり、一般消費者向け広告の可否を定めた広告規制の告示ではありません。

したがって、「別表に載っていない=一般消費者向け広告不可」という論理は成立しません。

※ 当該告示の正確な件名・別表の趣旨・最新の改正状況については、必ず官報掲載本文または厚生労働省の告示本文をご確認ください。弊社として本稿で断定的に解説することは差し控えます(URLが確実に特定できないため、リンクは付しておりません)。


4. 根拠となる法令・基準

(1) 薬機法

条文 内容 本件との関係
第66条(誇大広告等の禁止) 名称・製造方法・効能・効果・性能について虚偽又は誇大な記事の広告・記述・流布を禁止 最重要。届出した「使用目的又は効果」を超える広告は、これに該当すると判断されます
第67条(特定疾病用の医薬品等の広告の制限) 政令で定めるがんその他の特殊疾病に使用される医薬品又は再生医療等製品について、一般人向け広告方法を制限 条文上の対象は医薬品・再生医療等製品であり、医療機器は含まれないと解されます。ただし後述の適正広告基準による制限は医療機器にも及びます
第68条(承認前の医薬品等の広告の禁止) 承認・認証を受けていない品目の広告禁止 一般医療機器は承認・認証の対象ではないため直接の適用対象外ですが、製造販売届出が完了した後に、届出内容の範囲内で広告するのが安全です
第75条の5の2(課徴金納付命令) 第66条違反に対し、対象期間の売上額に応じた課徴金 違反時の経済的インパクトが大きい点に留意
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(2) 医薬品等適正広告基準(本件の核心)

  • 「医薬品等適正広告基準」(平成29年9月29日 薬生発0929第4号 厚生労働省医薬・生活衛生局長通知)
  • 「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について」(平成29年9月29日 薬生監麻発0929第5号 厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課長通知)

参照:医薬品等適正広告基準について(厚生労働省)

このうち本件に直結するのが、医療用医薬品等の広告の制限に関する規定です。同基準では概ね次の趣旨が定められています。

  • 医療用医薬品については、医薬関係者以外の一般人を対象とする広告を行わないこと
  • 医師若しくは歯科医師が自ら使用し、又はこれらの者の指導の下に使用することを目的として供給される医薬品及び医療機器については、医薬関係者以外の一般人を対象とする広告を行わないこと

※ 項番号は版により異なる場合がありますので、必ず通知原文でご確認ください。

つまり、規制の切り分けは「家庭」の語の有無でも「告示別表への掲載の有無」でもなく、上記の類型に該当するか否かという実質判断です。ご質問のケースは「医療関係者が自ら使用することを目的としたものではない」と整理されているため、この制限の対象外と説明できる可能性が高いといえます。

(3) 医療機器の広告に関する行政通知

医療機器の広告については、「医療機器の広告について」(平成22年8月17日 薬食監麻発0817001号)が発出されています。あわせてご確認ください。

参照:医療機器の広告について(平成22年8月17日 薬食監麻発0817001号)/厚生労働省 法令等データベース


5. 実務上の確認ポイント(重要な3点+補足)

【重要】この3点の整合を文書で確認する

# 確認資料 見るべきところ
製造販売届出書の「使用目的又は効果」 「医療機関において医師が…」等の限定がないか。一般消費者の自己使用と矛盾しないか。広告表現の上限はこの記載です
一般的名称(JMDN)の定義 定義文に「医師が」「医療従事者が」「医療施設で」等の記載がないか
添付文書(注意事項等情報)・取扱説明書 対象使用者・警告・禁忌が一般消費者向けに書かれているか(専門知識を前提としていないか)

①〜③のいずれかが「医療関係者による使用」を前提としているにもかかわらず一般消費者向けに広告した場合、届出内容と異なる広告=誇大広告(薬機法第66条)と評価されるおそれがあります。

【補足】あわせて確認する事項

  • 届出の完了:広告開始前に製造販売届出が完了していること
  • 表示(薬機法第63条):「一般医療機器」の文字、届出番号、製造販売業者名等の法定表示
  • 情報提供方法:一般消費者が自ら使用する製品では、注意事項等情報の提供方法(紙の添付文書の同梱を要するか等)を確認
  • 広告表現の個別審査:後述

6. 一般消費者向け広告で特に注意すべき表現

一般消費者向けは、医療関係者向けよりも表現制限が厳しく運用される傾向があります。

NGになりやすい表現
使用目的又は効果を超える効能標榜 「肩こりが治る」「〇〇病の予防に」(届出範囲外の場合)
疾病の治療・予防の断定 「これで血圧が下がります」
効果の保証的表現 「必ず改善」「100%安心」
最大級表現 「世界初」「効果No.1」(客観的根拠なく用いる場合)
医師・医療機関等による推薦 「〇〇クリニック院長推薦」
体験談の過度な利用・ビフォーアフター的暗示 効果を保証するかのような使用者の声、比較画像
  • 景品表示法(優良誤認・有利誤認)も同時に適用されます。
  • 「販売できること」と「広告できること」は別問題です。一般医療機器の販売には販売業の許可・届出は不要ですが(高度管理医療機器=許可、管理医療機器=届出)、広告規制は販売業の規制とは無関係にすべての医療機器に及びます。「一般医療機器だから広告は自由」という理解は誤りです。

参考動画
JNOS 第38回ウェビナー講義【後編】「医療広告 …」
広告ガイドラインや景品表示法まで含めた注意点の理解に。

7. 推奨アクション

  1. 届出書の「使用目的又は効果」の文言を再確認し、一般消費者の自己使用が読み取れるかを社内文書として整理する
  2. 読み取りにくい場合は、使用目的又は効果の記載を明確化する方向で届出内容の見直しを検討する
  3. 想定する広告物(Web・EC商品ページ・カタログ・パッケージ)のドラフトを作成し、都道府県薬務主管課(薬事監視・広告担当)に事前相談する。掲載媒体ごとに広告該当性・表現の評価が変わり得るため、媒体別に相談するのが有効です
  4. 国の法令・局長通知・課長通知を第一に参照したうえで、業界の自主基準(日本医療機器産業連合会「医療機器適正広告ガイド」、日本ホームヘルス機器協会「家庭向け医療機器等適正広告・表示ガイド」等)も補助的に参照する
  5. 社内に広告審査(薬事レビュー)手順を整備し、発信前チェックの結果を記録として残す

参考動画
コンサルティングのご案内(医療機器産業参入、医療機器薬事申請支援)
届出内容や広告可否の個別判断はご相談いただけます。

8. まとめ

  • ご質問の2要件(名称に「家庭」なし/令和3年厚生労働省告示第44号の別表に非掲載)は、一般消費者向け広告を禁止する根拠にはなりません。特に同告示は注意事項等情報の提供方法(添付文書の電子化)に関する整理であり、広告可否のルールではありません。
  • 判断の実質は、医薬品等適正広告基準にいう「医師若しくは歯科医師が自ら使用し、又はこれらの者の指導の下に使用することを目的として供給される医療機器か否か」です。
  • 「一般消費者による使用を想定した機器」であることを、届出書の使用目的又は効果/JMDN定義/添付文書という客観的資料で説明できることが前提です。
  • その上で、広告表現は届出した使用目的又は効果の範囲内に厳格に留める必要があり、最終的な適否は個別の広告表現ごとの審査事項となります。

本回答は一般的な考え方の整理であり、個別製品の適否を保証するものではありません。具体的な製品・広告案に即した確認が必要な場合は、届出内容の点検と広告表現レビューをご支援いたしますので、お気軽にご相談ください。


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