No.105薬機法で要求される符号について
薬機法における2つの「符号」— 電子添文アクセス用符号(第63条の2)とUDI(第68条の2の5)
結論
ご質問の前提(当該製品が令和3年厚生労働省告示第44号に掲げられていない一般医療機器であり、かつ実態として専ら一般消費者向けであること)が正しい場合、前段の「電子添文を入手するための符号(法第63条の2第1項)の表示が必要」というご理解は、そのとおりです。
一方、後段の「医療機器を特定するための符号(法第68条の2の5)は不要」という部分は、結論としてはあり得ますが、「告示第44号に掲げられていないから不要」という理由づけは成り立ちません。 告示第44号は、あくまで第63条の2(電子添文・紙添付文書)のための指定告示だからです。
さらに、確認していただきたい重要な論点があります。第68条の2の5に基づく表示義務の適用除外が、薬機法施行規則上、
- (a) 「専ら一般消費者の生活の用に供されることが目的とされている医療機器」という実質基準で定められているのか、
- (b) 「第63条の2第2項の規定により厚生労働大臣が指定する医療機器(=告示第44号に掲げられたもの)」という告示の引用で定められているのか、
によって結論が逆転する可能性があります。(a) であればご理解のとおり「不要」となる可能性が高い一方、(b) であれば、告示第44号に掲げられていない本件製品はUDI表示義務の対象となり、ご理解とは逆の結論になります。
※弊社では現時点で、施行規則の該当条文の文言を確実に特定できておりません。推測でのご案内は差し控えますので、必ず施行規則本文および関連通知の原文をご確認いただくか、当局へ書面照会されることをお勧めします。
0. まず全体像を1枚で
初心者の方は、次の「2本の別々の判定」として捉えてください。
【判定1】添付文書をどうするか(法第63条の2)
├─ 令和3年厚労省告示第44号に掲げられている
│ → 従来どおり「紙の添付文書」等に記載
└─ 掲げられていない ← 今回のケース
→ 電子添文(PMDAで公表)+容器・被包に「符号」を表示【必要】
【判定2】製品を一意に特定する符号(UDI)をどうするか(法第68条の2の5)
└─ 判定1とは別の基準(薬機法施行規則+関連通知)で該当性を判断
→ 「専ら一般消費者向け」なら対象外となる可能性が高い
※ ただし上記(a)(b)のいずれで定義されているか要確認
ポイント:判定1と判定2は、条文も目的も別制度です。判定1の結果が、そのまま判定2の根拠になるわけではありません。
※「一般消費者の生活の用に供されることが目的とされている医療機器」とは、平たく言えば「家庭用など、一般の方が自分で使うことを想定した医療機器」のことです(以下、平易に「一般向け医療機器」と呼ぶ場合があります)。
1. 2つの「符号」の比較
| 比較項目 | ①電子添文を入手するための符号 | ②医療機器を特定するための符号(UDI) |
|---|---|---|
| 根拠条文 | 薬機法第63条の2第1項 | 薬機法第68条の2の5 |
| 目的 | 紙の添付文書に代えて、常に最新の注意事項等情報(電子添文)にアクセスできるようにする | 流通・医療現場での製品の一意な特定(トレーサビリティ、取り違え防止、回収の迅速化) |
| 表示場所 | 容器又は被包 | 容器又は被包(販売包装単位・元梱包装単位等) |
| 除外の枠組み | 第63条の2第2項に基づく厚生労働大臣の指定(令和3年厚生労働省告示第44号)に掲げられた医療機器は、従来どおり文書(紙の添付文書)等に必要事項を記載 | 薬機法施行規則および関連通知で定める適用除外(一般向け医療機器が対象外とされていると理解していますが、条文上の定義方法は要確認) |
| 符号の形式 | GS1データマトリックス等の二次元コード、バーコード、番号・記号など。「バーコード」に限定されるわけではありません | 同左(GS1標準のGTIN等を用いるのが実務上一般的) |
| 施行 | 令和3年8月1日(経過措置あり) | 令和4年12月1日以降、順次義務化済み(包装単位・品目により経過措置あり) |
※UDI(Unique Device Identification/機器固有識別)は、機器を世界共通のルールで一意に識別する国際的な仕組みの名称です。日本の法令上の用語は「医療機器を特定するための符号」であり、UDIという語そのものは条文には登場しません。
2. 用語の整理(ここを混同すると議論がずれます)
| 用語 | 意味 | 根拠 |
|---|---|---|
| 注意事項等情報 | 使用及び取扱い上の必要な注意など、法定の記載事項そのもの(法律上の用語) | 法第68条の2第2項 |
| 電子添文 | 上記をPMDAのウェブサイトで公表したもの(いわゆる「電子化された添付文書」) | 法第68条の2第1項 |
| 符号 | 容器・被包に表示し、電子添文にたどり着くための手段(二次元コード等) | 法第63条の2第1項 |
| 届出 | 注意事項等情報をPMDAへ届け出る義務(厚生労働大臣が指定する医療機器が対象) | 法第68条の2の3 |
「公表」「符号表示」「届出」は別々の義務であり、対象範囲も一致しません。特に届出義務は、厚生労働大臣が指定する医療機器(主に高度管理医療機器等)に限られており、一般医療機器(クラスI)が一律に届出対象となるわけではありません。 該当性は一般的名称ごとに確認が必要です。
- 参考:PMDA「添付文書の電子化について」
- 参考:厚生労働省「医薬品等の注意事項等情報の提供について」(通知本文) ※この通知本文中に、令和3年厚生労働省告示第44号が明示されています。
- 参考:「医療機器の電子化された添付文書の記載要領について」(厚生労働省・通知PDF) / 同通知(法令等データベース掲載ページ) ※記載要領通知はその後改正されている可能性があります。運用の際は必ず最新版をご確認ください。
3. 論点①:電子添文アクセス用符号(法第63条の2)— ご理解のとおりです
制度の構造
- 原則(第63条の2第1項):医療機器の容器・被包に、注意事項等情報を入手するために必要な符号を記載する。
- 例外(第63条の2第2項):一般消費者の生活の用に供されることが目的とされている医療機器であって厚生労働大臣が指定するもの等については、従来どおり文書(紙の添付文書)等に法定事項を記載する。この「指定」が令和3年厚生労働省告示第44号です。
※第63条の2第2項の号建て(第1号か否か)については、最新の条文本文でご確認ください。
したがって
告示第44号に掲げられていない一般医療機器であれば、実態として一般の方が使う製品であっても、法形式上は電子添文+符号表示(第63条の2第1項)の対象となります。ご理解のとおりです。
※告示第44号は「これに掲げられたものだけが紙の添付文書となる」という限定列挙の指定告示です。「載っていない=原則(電子添文+符号)に戻る」という読み方になります。
実務上の注意点
一般消費者に情報が届くかという安全上の課題 一般の方は二次元コードを読み取れても、内容が専門的で理解しにくい場合があります。取扱説明書等の紙媒体を同梱すること自体は妨げられませんが、それは法定の添付文書の代替にはなりません(法的には電子添文が正本です)。
- 同梱物と電子添文の内容が食い違わないよう、改訂時の版管理・回収/差替えの手順をあらかじめ定めてください。
- 同梱物が「添付文書」と誤認されるような体裁(例:表題を「添付文書」とする)は避けるのが無難です。
告示第44号は改正され得ます 実態が一般向けであるにもかかわらず告示に掲げられていない場合、業界団体(日本医療機器産業連合会等)を通じた指定追加の要望という選択肢もあります。まずは最新改正を反映した告示本文をご確認ください。
※ 告示本文の正確なURLについては確信が持てないため、リンクは付しておりません。厚生労働省の法令等データベース、または上記「医薬品等の注意事項等情報の提供について」通知からご確認ください。
4. 論点②:医療機器を特定するための符号(法第68条の2の5)— 理由づけの修正と要確認事項
(1) 告示第44号を根拠にする論法は使えません
- ❌「告示第44号に掲げられていないから、第68条の2の5の符号は不要」 → 論理が成立しません。 告示第44号は第63条の2第2項のための指定であり、それ自体が第68条の2の5の要否を決めるものではありません。むしろ、この論法は「告示に載っていない=UDI必要」という逆方向の解釈も可能にしてしまいます。
- ⭕「当該製品は専ら一般消費者の生活の用に供されることが目的とされているため、施行規則上、第68条の2の5に基づく表示義務の対象外である」 → 主張するのであれば、こちらの立て方です(ただし次項の確認が前提)。
(2) 必ず確認すべき点
第68条の2の5に基づく表示義務の対象・対象外は、薬機法施行規則および関連通知で定められています。ここで、
- (a) 実質基準型:「専ら一般消費者の生活の用に供されることが目的とされている医療機器を除く」といった書き方
- (b) 告示引用型:「第63条の2第2項の規定により厚生労働大臣が指定する医療機器を除く」といった書き方
のどちらであるかによって、本件の結論が真逆になります。
| 施行規則の定め方 | 本件(告示第44号に非掲載・実態は一般向け)の帰結 |
|---|---|
| (a) 実質基準型 | 一般向けと説明できれば表示義務の対象外(ご理解のとおり) |
| (b) 告示引用型 | 告示に掲げられていないため表示義務の対象(ご理解と逆) |
※弊社では現時点でどちらであるか確実に特定できておりません。推測での断定は避けます。施行規則本文(第68条の2の5関係)および関連通知を必ず一次情報でご確認ください。
(3) 「専ら一般消費者向け」と説明できるかの判断要素
販売経路だけで機械的に判断するのは危険です。次の要素を総合し、客観的資料として社内に記録しておくことをお勧めします。
- 製造販売届書に記載した使用目的又は効果の文言(「家庭において」「一般使用者が」等の記載の有無)— 最重要
- 一般的名称の定義(医療従事者の使用を前提とした定義になっていないか)
- 販売名・包装表示・取扱説明書・広告表現が一般消費者向けとなっているか
- 販売経路(一般小売・ECのみか、医療機関向け卸を含むか)と、医療機関への供給実績
- 同一一般的名称の他社製品が、告示第44号やUDIの運用上どう扱われているか
医療機関にも供給され得る製品(いわゆる医家・家庭両用)の場合は、表示義務の対象と判断される可能性が高まります。特に慎重な検討が必要です。
5. 実務的な推奨対応
(1) 結果的に、GS1標準の符号を表示するのが合理的なケースが多い
第63条の2第1項の符号表示義務はいずれにせよ課されるため、容器・被包に何らかの符号を表示することになります。
- GS1標準のコード(GTIN等を含むもの)で設計すれば、①電子添文アクセス用符号と②UDIを事実上兼ねる形にでき、上記4(2)の(a)(b)いずれの解釈でも問題が生じません。リスクベースの観点からは、これが最も安全な設計です。
- 逆に「UDIは不要」と判断して符号設計を簡素化する場合は、その判断根拠を文書化しておかないと、後日の当局調査や自主点検で説明できなくなります。
(2) 表示仕様・判断根拠の記録化
QMS省令(医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令/平成16年厚生労働省令第169号)に基づく表示・包装工程の管理の一環として、次を文書化しておくことをお勧めします。
- ラベル設計書・表示仕様書に、どの符号がどの条文への対応かを明記(第63条の2第1項用/第68条の2の5用)
- 該当性判断の根拠(告示第44号の該当・非該当、一般向けと判断した根拠資料)
- 判断日、判断者、参照した法令・告示・通知の版(発出日・番号)
- 告示・省令・通知が改正された場合の再評価手順(レギュラトリー・インテリジェンス)
(3) 照会先
| 内容 | 照会先の目安 |
|---|---|
| 電子添文・注意事項等情報(法第63条の2、第68条の2) | 厚生労働省 医薬局(安全対策担当)、PMDA、都道府県薬務主管課 |
| 医療機器を特定するための符号(法第68条の2の5) | 厚生労働省の医療機器流通・情報化担当部局、都道府県薬務主管課 |
※部署名は組織改編により変わり得ます。
※ 製造販売業の許可を受けた都道府県の薬務主管課に、一般的名称・販売名・使用目的の文言を示したうえで書面照会し、回答を記録として保管されることを強くお勧めします。
6. まとめ
- 前段(電子添文の符号)はご理解のとおり。令和3年厚生労働省告示第44号に掲げられていない以上、実態が一般消費者向けでも、第63条の2第1項の符号表示義務が生じます。
- 後段(医療機器を特定するための符号)は、結論はあり得るが理由づけが誤り。「告示第44号に掲げられていないから不要」ではなく、「専ら一般消費者の生活の用に供されることが目的とされているため対象外」という別の判断軸で説明する必要があります。
- ただし、施行規則が告示第44号を引用して適用除外を定めている場合には、結論が逆(=表示義務あり)になり得ます。 ここは弊社として確認できていないため、必ず施行規則本文でご確認ください。
- 実務上は、GS1標準の符号を表示して両制度に対応させる設計が、解釈リスクを回避する観点から合理的です。
- 個別製品の該当性は、使用目的・一般的名称・販売経路等により変わります。最新の告示・省令・通知を確認のうえ、当局へ書面照会されることをお勧めします。
参考(一次情報)
- e-Gov法令検索「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(昭和35年法律第145号)
- 厚生労働省「医薬品等の注意事項等情報の提供について」(通知本文/令和3年厚生労働省告示第44号への言及あり)
- 「医療機器の電子化された添付文書の記載要領について」(厚生労働省 通知PDF)
- 同上(厚生労働省 法令等データベース掲載ページ)
- PMDA「添付文書の電子化について」
- 令和3年厚生労働省告示第44号(一般消費者の生活の用に供されることが目的とされている医療機器を指定する告示)
※ 最新改正を反映した本文をご確認ください。正確なURLに確信が持てないため、リンクは付しておりません。 - 薬機法施行規則のうち法第68条の2の5に関する規定および関連通知
※ 条番号・通知の正式名称および発出番号を弊社として確実に特定できていないため、記載を控えています。推測でのご案内は行いません。
免責事項
本回答は、ご提示いただいた前提条件に基づく一般的な情報提供であり、特定製品に対する法的助言または当局見解を代替するものではありません。特に法第68条の2の5に係る適用除外の定め方(施行規則の該当条文の文言)については、弊社として確実な特定ができておりません。最終的な該当性判断は、必ず一次情報(法令・省令・告示・通知の本文)および所管当局への照会結果に基づいて行ってください。
株式会社イーコンプライアンス
追加質問 1「医療機器、体外診断用医薬品等を特定するための符号の容器への表示等について(薬生安発091…
追加質問への回答 — 「特定用符号(UDI)」の適用除外は"流通実態"で判断されます
結論
ご提示いただいた通知および質疑応答集(Q&A)を根拠とする限り、ご理解のとおりで問題ないと考えられます。
整理すると次のとおりです。
| 判定対象 | 結論 | 判定の軸 |
|---|---|---|
| ①電子添文を入手するための符号(法第63条の2第1項) | 表示 必要 | 令和3年厚生労働省告示第44号に「掲げられているか」という品目リスト(限定列挙) |
| ②医療機器を特定するための符号=いわゆるUDI(法第68条の2の5) | 表示 不要(ただし要件充足の立証が前提) | 「主として一般消費者の生活の用に供されることが目的とされているか」という流通実態による実質判断 |
すなわち、②の適用除外は告示第44号を引用しておらず、告示への掲載有無とは連動しません。したがって「告示第44号に掲げられていない一般医療機器」であっても、Q&A(A7)にいう「流通実態として一般消費者が医療機関を介さず直接購入することが主である製品」に該当するのであれば、特定用符号の表示は不要という整理になります。
前回の回答で弊社が「確認が必要」と申し上げた論点、すなわち
- (a) 実質基準(専ら一般消費者向けか)で定められているのか
- (b) 告示第44号の引用で定められているのか
については、ご提示いただいた通知・Q&Aにより (a) の実質基準であることが確認できました。貴重な情報のご提示に御礼申し上げます。
※ただし、実質基準であるということは「判断の責任が事業者側にある」ということでもあります。「不要」と判断した根拠の文書化と定期的な再評価が実務上きわめて重要です(後述の4.)。
1. 根拠となる行政文書
(1) 特定用符号(UDI)の対象範囲を定める通知
「医療機器、体外診断用医薬品等を特定するための符号の容器への表示等について」 (令和4年9月13日付 医政産情企発0913第2号・薬生安発0913第2号/厚生労働省医政局産業振興・医療情報企画課長、医薬・生活衛生局医薬安全対策課長 連名通知)
この通知の「2 対象となる医療機器等」において、対象とならないものとして「主として一般消費者の生活の用に供されることが目的とされている医療機器」が挙げられています。
重要なのは、この記載が「第63条の2第2項の規定により厚生労働大臣が指定する医療機器」といった告示の参照をしていない点です。 告示第44号の掲載有無は、②の要否判断に直接は影響しません。
※通知「2」には、この項目のほかにも除外項目(製造専用の医療機器、一般用検査薬に該当する体外診断用医薬品 等と承知しています)が列挙されています。弊社にて全項目を確定的に列挙することは差し控えますので、必ず通知原本で全項目をご確認ください(後述5.の(2))。
(2) 解釈を明確化した質疑応答集(Q&A)
「医療機器、体外診断用医薬品等を特定するための符号の容器への表示等に関する質疑応答集(Q&A)について」(事務連絡)
ご引用のA7:
「当該医療機器の一般的名称にかかわらず、流通実態として一般消費者が医療機関を介さず直接購入することが主である製品を想定している。」
この一文には、実務上きわめて重要な3つの意味があります。
- 一般的名称(JMDNコードに紐づく名称)では判断しない 一般的名称に「家庭用」と付いているか否かは決定要素ではありません。逆に、医療機関でも家庭でも使われる同一の一般的名称の製品について、製品ごとの流通実態で判断することになります。
- 判断軸は「流通実態」 カタログ上の想定用途ではなく、実際にどの経路で誰に販売されているかが問われます。
- 「主である」=主従の判定 100%である必要はありませんが、「主たる流通が一般消費者への直接販売か」を事業者が判定し、説明できる必要があります。
※Q&Aは追補・改正が行われることがあります。ご提示の「令和8年2月10日付事務連絡」の版を前提としておりますが、設問番号(Q7/A7)や文言は版によって変わり得ますので、最終判断の際は必ず最新版の原本で該当設問をご確認ください。
※法令本体:e-Gov法令検索「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(昭和35年法律第145号)(第63条の2、第68条の2の5)
2. なぜ①は「必要」で②は「不要」になるのか
初めてこの制度に触れる方向けに、身近な例で整理します。
| ①電子添文アクセス用符号 | ②医療機器を特定するための符号(UDI) | |
|---|---|---|
| 根拠条文 | 薬機法 第63条の2第1項 | 薬機法 第68条の2の5 |
| ひとことで言うと | 「説明書はここにあります」の道案内 | 「この製品は世界で唯一これです」の背番号 |
| 誰のための仕組みか | 製品を使う人(一般消費者を含む) | 主として医療機関・卸などの流通/医療現場 |
| 目的 | 常に最新の注意事項等情報(電子添文)にアクセスできるようにする=安全確保 | 製品の一意特定=取り違え防止、トレーサビリティ(追跡)、回収の迅速化 |
| 典型的な場面 | ドラッグストアで買った家庭用血圧計の使用上の注意を、スマホで二次元コードを読んで確認する | 病院がステントやカテーテルをバーコードで読み取り、どの患者にどのロットを使ったかを記録する |
| 除外の判定軸 | 告示(品目リスト)による限定列挙 | 流通実態による実質判断 |
ポイント
- ①は「使う人に情報を届ける」制度なので、一般消費者向け製品でも(告示で名指しされない限り)必要です。
- ②は「医療現場・流通での追跡」制度なので、そもそも医療機関を通らずに消費者に直接届く製品を対象外とする合理性があります。
- 判定軸が「リスト」と「実態」で異なるため、「告示第44号に載っていないから②も必要」という連動関係は成立しません。
用語の補足
※UDI(Unique Device Identification:機器固有識別)=医療機器を世界共通のルールで一意に識別する国際的な仕組みの通称です。日本の法令上の用語は「医療機器を特定するための符号」であり、条文に「UDI」という語は出てきません。
※GS1=流通コードの国際標準化団体。GTIN(Global Trade Item Number:商品識別コード)は、そのGS1が定める商品の識別番号です。GS1-128やGS1データマトリックスは、それを印字するバーコード/二次元コードの様式(シンボル体系)を指します。
※JMDN(Japanese Medical Device Nomenclature:日本医療機器名称)=医療機器の一般的名称を体系化したコードです。
3. 注意:電子添文側の「一般消費者向けは除く」という記載の読み方
行政の説明資料やスライドでは、添付文書電子化の説明に際して「ただし、主として一般消費者の生活の用に供されることが目的とされている医療機器等を除く」と略記されていることがあります。これを見て「一般消費者向けなら電子添文・符号は不要」と読んでしまうと誤りです。
薬機法第63条の2の構造は次のとおりです。
- 第1項(原則):医療機器の容器・被包に、注意事項等情報を入手するために必要な符号を記載する。
- 第2項(例外):主として一般消費者の生活の用に供されることが目的とされている医療機器であって厚生労働大臣が指定するもの等は、従来どおり文書(紙の添付文書)等に法定事項を記載する。この「指定」が令和3年厚生労働省告示第44号です。
つまり、例外に入るには「一般消費者向けであること」だけでは足りず、「告示第44号に掲げられていること」が必要です。前述の略記は、この告示指定カテゴリーを縮めて表現したものと理解するのが条文構造に即した読み方です。
したがって、告示第44号に掲げられていない以上、実態が一般消費者向けであっても、①電子添文+符号表示は原則どおり必要というご理解で変わりません。
※弊社にて告示第44号本体の確実なURLを特定できていないため、リンクは付しておりません。厚生労働省の法令等データベース、または「医薬品等の注意事項等情報の提供について」通知から最新改正版をご確認ください。
※参考:PMDA「添付文書の電子化について」(関連通知・Q&AのPDFはこのページから辿れます)
4. 実務上の注意点 — 「実態基準」ゆえの落とし穴
(1) 「主である」に法令上の数値基準はありません
通知・Q&Aには「〇%以上」といった定量的な閾値は示されていないものと理解しています。したがって、
- 行政が定めた一律のパーセンテージは存在しない
- 事業者が合理的な考え方を自ら設定し、その根拠を記録として残す
というのが正しい対応です。以下は判定に使い得る指標の例であり、特定の割合を推奨するものではありません。
| 指標 | 内容 | 裏付け資料の例 |
|---|---|---|
| 販売数量比 | 一般消費者向けルート ÷ 全体 | 出荷実績、販売管理システムデータ |
| 販売金額比 | 同上(金額ベース) | 売上データ |
| 販売チャネル構成 | ドラッグストア・家電量販・EC / 医療機関・卸・ディーラー | 取引先マスタ、チャネル別売上 |
| 表示・広告の実態 | パッケージデザイン、広告媒体、対象読者 | 販促資料、Webサイト |
| 取扱説明書等の記載 | 「ご家庭で」「お客様相談室」等 | 電子添文、取扱説明書 |
(2) 流通ルートのイメージ
【一般消費者向け直販ルート】← これが「主」なら②は対象外
製造販売業者 → 卸/商社 → ドラッグストア・家電量販店・ECサイト → 一般消費者
【医療機関経由ルート】← これが「主」なら②の対象になり得る
製造販売業者 → 医療機器卸・ディーラー → 病院・診療所 → 患者へ販売/貸与
(3) 「混在流通」に要注意
同一製品が両ルートで流通している場合は、慎重な判断が必要です。
- 医療機関向けの比率が上昇し「主である」といえなくなった時点で、表示義務が発生する可能性があります。
- 医療機関側から「バーコードがないと院内物流システムに載せられない」として、取引条件として表示を求められることもあります(法的義務とは別次元の、商流上の要請です)。
※院内物流の代行サービスはSPD(Supply Processing and Distribution)と呼ばれ、病院内の医療材料の在庫・供給管理を担う仕組みです。
(4) 判断根拠の文書化(最重要)
行政の立入検査やQMS調査、あるいは回収発生時に「なぜ特定用符号を表示していないのか」を説明できる状態にしておくことが必須です。
文書化すべき最低限の項目
- 対象製品の一般的名称、クラス分類、承認/認証/届出番号
- 適用除外と判断した根拠(令和4年9月13日付 医政産情企発0913第2号・薬生安発0913第2号「2 対象となる医療機器等」、および質疑応答集の該当設問)
- 流通実態の裏付けデータ(チャネル別の販売数量・金額、対象期間)
- 判定結論・判定日・判定責任者(安全管理責任者等)の承認
- 再評価の頻度とトリガー(新規チャネル追加時、医療機関向け比率が一定水準を超えた時 等)
(5) ①と②は別々のチェック項目として管理する
- ②を「不要」と判断した製品でも、①(電子添文アクセス用符号)は容器・被包に必要です。
- ラベル設計時に「UDI不要=バーコード類は一切不要」と短絡しないよう、設計開発および変更管理の手順に明記してください。
- 参考:QMS省令(医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令/平成16年厚生労働省令第169号)の設計開発に関する規定(第30条〜第37条。うち第37条が設計開発の変更の管理)
5. 「法定の特定用符号」と「任意のバーコード」は別物です
初学者の方が最も誤解しやすい点です。
| 法定の特定用符号 | 任意のバーコード | |
|---|---|---|
| 位置づけ | 薬機法第68条の2の5に基づく法定表示 | 社内在庫管理・取引先要請等による自主的表示 |
| 要件 | 通知で定めるコード体系(GS1標準)と、必要なデータ要素(商品コード、有効期限、ロット番号 等)・包装単位ごとの規定を満たす必要がある | 特に法令上の要件はない |
| 「バーコードが付いている」=UDI対応か | 付いているだけでは対応とはいえません。中身(データ要素・包装単位)が要件を満たして初めて適合 | 適合とは無関係 |
法的に不要であっても、企業判断でGS1標準のバーコードを任意表示すること自体は妨げられません。将来の医療機関ルート拡大や海外規制対応を見据える場合、先行表示にメリットがあることもあります。
- 参考(米国):eCFR 21 CFR Part 830 — Unique Device Identification
- 参考(欧州):Regulation (EU) 2017/745(MDR) 附属書VI Part C(UDIシステム)
6. まとめ — 判定フロー
【製品】告示第44号に掲げられていない一般医療機器
(流通実態=一般消費者が医療機関を介さず直接購入することが主)
┌─ 判定1:電子添文アクセス用符号(法第63条の2第1項)
│ Q. 告示第44号に掲げられているか?
│ → いいえ(掲げられていない)
│ → 第1項の原則どおり ★表示 必要★
│ (
※ 「一般消費者向けだから不要」にはならない。
│ 例外は告示に掲げられた品目に限られる)
│
└─ 判定2:医療機器を特定するための符号/UDI(法第68条の2の5)
Q. 令和4年9月13日付 医政産情企発0913第2号・薬生安発0913第2号
「2 対象となる医療機器等」の除外①に該当するか?
(Q&A:一般的名称ではなく流通実態で判断)
→ はい(一般消費者への直接販売が主)
→ ★表示 不要★
(ただし①判断根拠の文書化 ②定期再評価 ③他の除外項目の確認 が前提)
7. 最終確認のお願い
本回答は、ご提示いただいた通知・事務連絡の記載を前提とした解釈です。以下は必ず貴社にてご確認ください。
- 原本・最新版の確認 令和4年9月13日付 医政産情企発0913第2号・薬生安発0913第2号、および質疑応答集(Q&A)事務連絡の最新版全文(改正・追補の有無を含む)
- 他の除外項目の確認 「2 対象となる医療機器等」には①以外の除外項目も列挙されています。自社製品が他項目に該当するか否かも併せてご確認ください
- 流通実態の実データによる裏付け 「主である」といえるかを、直近の販売実績(チャネル別数量・金額)で客観的に示せるようにする
- 疑義がある場合の照会 混在流通など判定が微妙なケースでは、都道府県薬務主管課、または厚生労働省の所管課(医薬安全対策課・医療機器政策の所管課)へ書面で照会し、回答を記録として保存されることを強くお勧めします
※本回答は一般的な法令解釈の整理であり、個別製品についての適法性を保証するものではありません。最終的な適合性判断は、貴社の責任において、原本および当局照会結果に基づき行ってください。
株式会社イーコンプライアンス





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