No.117医療機器QMSにおける責任者等の兼務と、文書・記録確認及び内部監査の独立性

医療機器規制全般投稿者: スガ2026年9月29日 17:15
ISO事務局(主に文書の発行管理・教育)、推進役(マニュアル等の見直し、業務改善)、安責、監査リーダーを兼務することになった場合、例えば、計画書やCAPAの文書・記録の内容を確認して誤記や文法、記載要領不備等を指摘することは薬事法違反の可能性はありますか。兼務者が出来ること/出来ないことはどこまでと考えればよいでしょうか。 また、人員不足を理由にはできませんがどのような対応が一般的でしょうか。

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公式回答株式会社イーコンプライアンス2026年10月4日 03:38

医療機器QMSにおける「責任者等の兼務」と、文書・記録レビュー/内部監査の独立性

結論(先に要点)

  1. 計画書やCAPA記録の誤記・文法・記載要領の不備を指摘すること自体は、通常、医薬品医療機器等法(薬機法)で禁止されている行為ではありません。 これを一律に禁じる条文はなく、むしろ文書・記録管理の一環として期待される活動です。
  2. ただし、記録の作成・訂正・承認のやり方によっては、QMS省令上の手順違反や記録の信頼性(データインテグリティ)の問題になり得ます。具体的には、承認済み記録を無断で書き換えさせる/作成者に代わって署名・日付を記入する/実質的な内容変更の履歴を残さない、といったケースです。
  3. 兼務の線引きは「役職名」では決まりません。①その行為が形式確認か内容判断か、②その人が当該業務の実施者・承認者か、③その後に監査や有効性評価を行う立場か、④法令上の責任者要件・報告経路に抵触しないか、⑤手順書と記録で説明できるか ——この5点で判断します。
  4. 最も避けるべきは、自分が実施・承認した業務を、自分が単独で監査・有効性評価・完了判定すること(客観性の喪失)です。これは「法令が兼務そのものを禁じている」のではなく、QMS省令第56条(内部監査)およびISO 13485:2016 箇条8.2.4が求める客観性・公平性を確保するための運用原則として導かれるものです。
  5. 人員不足時の一般的対応は、人を増やすのではなく、職務分掌の明文化+監査対象からの除外(割当の工夫)+上位者レビュー+外部監査員の管理された活用+兼務リスクのマネジメントレビューでの記録化で客観性を補完することです。

※ ご質問の「薬事法」は、2014年11月25日施行の改正により「医薬品医療機器等法(薬機法)」へ名称変更されています。以下では薬機法と表記します。


0. 最初に:用語の整理(初心者向け)

似た言葉が混在しやすいため、先に区別します。

用語 意味 根拠
QMS省令 医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令(平成16年厚生労働省令第169号)。製品の品質を確保する仕組み(QMS)の要求事項 薬機法第23条の2の5等に基づく
GVP省令 医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品の製造販売後安全管理の基準に関する省令(平成16年厚生労働省令第135号)。市販後の安全確保業務の基準 製造販売業許可の要件の一つ
CAPA Corrective Action and Preventive Action(是正措置・予防措置)。不具合の原因を除去する措置と、発生を予防する措置 QMS省令 第63条・第64条/ISO 13485 箇条8.5.2・8.5.3
文書・記録レビュー(校閲) 文書の形式・内容・承認・改訂状況を確認する日常業務。監査ではありません QMS省令の文書管理・記録管理の規定
内部監査 QMSが要求事項に適合し、有効に実施・維持されているかを、計画された手順で独立的に評価する活動 QMS省令 第56条/ISO 13485 箇条8.2.4
GVP自己点検 製造販売後安全管理業務が適切に行われているかを点検する活動。内部監査とは別の制度・別の活動 GVP省令の自己点検規定

「校閲=監査」ではないという点が、今回のご質問を整理する最大の鍵です。校閲は日常のライン業務、内部監査は独立性が要求される評価活動です。


1. 前提として確認いただきたい点(結論が変わる要素)

本回答は一般論です。実際の線引きは次の条件で変わりますので、社内で先に確認されることをお勧めします。

  • 製造販売業者か、製造業者(登録製造所)か、あるいは両方か
  • 医療機器の区分(第一種/第二種/第三種医療機器製造販売業=高度管理/管理/一般医療機器のいずれを扱うか)
  • 体外診断用医薬品や医薬品等を併せて扱うか(GVPの適用条文が変わります)
  • ご自身が担う「安責」が、第一種・第二種・第三種のどの業態の安全管理責任者か
  • QMS上の「管理責任者」、業許可上の「総括製造販売責任者」「国内品質業務運営責任者」との関係

2. 兼務されている4つの役割は「法的な重さ」が異なります

ご質問の役割 法令上の位置づけ 独立性・要件の強さ
ISO事務局(文書の発行管理・教育) 法令上の役職名ではない社内呼称。実体はQMS省令上の文書・記録の管理および教育訓練(力量の確保)の実務担当 法令上の人的要件なし。手順書で定めた役割どおりに行うことが要求される
推進役(マニュアル見直し・業務改善) 同上(社内呼称)。実体は品質管理監督システムの維持・改善の実務 法令上の人的要件なし
安全管理責任者(安責) GVP省令に基づき、製造販売業者が設置する安全確保業務の責任者。製造販売業の体制要件に関わる 強い。業態に応じて、安全確保業務を適正・円滑に遂行しうる能力、組織上の位置付け(販売部門に属さない等)が定められる
内部監査リーダー(監査員) QMS省令第56条に基づく監査の実施者 客観性・公平性の確保が要求される(ISO 13485:2016 箇条8.2.4に対応)

※ 安全管理責任者の具体的な要件(能力、組織上の位置付け、兼務の可否)は、GVP省令の業態別の条文で定められており、第一種・第二種・第三種で内容が異なります。「販売部門に属さないこと」等が一律にすべての業態へ同じ形で適用されるわけではありませんので、該当業態の条文を必ず原文でご確認ください。当社として一律に断定することは控えます。

※ 三役(総括製造販売責任者・国内品質業務運営責任者・安全管理責任者)の相互の兼務可否は、業態や取扱品目、さらに許可権者(都道府県薬務主管課)の運用解釈にも左右されます。組織設計の前に必ず所轄の薬務主管課へご確認ください。


参考動画
【ワンポイントMD】第139回 医療機器の三役とは
医療機器の三役の役割と兼務の考え方を短時間で確認できます。

3. ご質問①「誤記・文法・記載要領の不備を指摘するのは違反か?」

3-1. 結論:形式確認と不備の指摘そのものは、通常、禁止されていません

薬機法・QMS省令・GVP省令のいずれにも、「特定の役職を兼務している者が文書の形式を確認してはならない」という規定はありません。QMS省令は文書及び記録の管理を要求しており、記載要領への適合性確認は文書管理担当者の正当な職務です。

なお、ご質問の趣旨を明確にするため、「薬機法違反」と「QMS不適合」は別のレベルであることを押さえてください。

レベル 内容
薬機法違反 法・省令が定める義務に違反している状態(例:法令が要求する責任者を実質的に置いていない、虚偽の記録に基づく出荷判定)
QMS省令・GVP省令への不適合 省令要求を満たしていない状態。適合性調査・QMS調査での「不適合」指摘
社内手順違反 手順書に定めたとおり運用していない状態(多くの指摘はここから始まります)

誤記の指摘が「薬機法違反」に問われるという構図は、通常想定しがたいものです。実務上のリスクは、下の3-3で挙げる手順との不整合と記録の信頼性にあります。

3-2. 「確認」を3段階に分けて定義してください

計画書やCAPAでは「誤字脱字」と「内容の妥当性」の間に、整合性の確認という中間領域があります。ここを手順書で切り分けないと、兼務者の行為が「内容判断」に見えてしまいます。

段階 内容 一般的な担い手
① 形式・文書管理確認 誤記、記載漏れ、文書番号・版数・改訂履歴、承認欄の充足、記載要領適合 文書管理担当(ISO事務局)で可
② 整合性・完全性の確認 日付、責任者、原因、措置内容、期限、実施結果、リスク評価、有効性評価の各欄が相互に矛盾していないか、空欄がないか 事務局が「指摘・差戻し」までは可。判断は所管責任者
③ 内容の技術的・品質上の妥当性判断/承認/有効性評価 根本原因分析が妥当か、是正措置が適切か、完了と認めるか 所管責任者・品質部門(CAPA責任者等)

②を「形式確認」に押し込めないことが重要です。②は「不備の指摘」であって「判断」ではない、という位置付けを手順書に明記すると、査察・調査での説明が容易になります。

3-3. 注意すべき3つの境界線

論点 危険なパターン 望ましい運用
A. 手順書と実態のずれ 手順書では「CAPAの内容確認は品質保証責任者」となっているのに、実態は事務局が内容まで判断・決定している 手順書に「形式・整合性確認(事務局)」と「内容の妥当性確認・承認(所管責任者)」を分けて明記し、実態と一致させる
B. 記録の訂正のさせ方 「誤記だから」と承認済み記録を消して書き直させる/電子ファイルを上書きさせる/作成者に代わって事務局が署名・日付を入れる 下記 3-4 の区分に従う。代筆・代理署名は行わない
C. 内容判断への踏み込み 「この根本原因分析は不十分だから、こう変えろ」と事務局が実質決定してしまう 事務局は不備の指摘・修正依頼・再提出の確認まで。技術的妥当性の判断と承認は所管責任者が行い、判断者が記録上明確になるようにする

※ 「差戻しの起票まで」と狭く限定する必要はありません。修正依頼と再提出の確認まで事務局が担う手順も一般的です。重要なのは、誰が内容を決定し、誰が承認したかが記録上明確であることと、修正履歴が残っていることです。

3-4. 記録の訂正:承認前/承認後/紙/電子で扱いが変わります

状況 扱い
承認前のドラフト 起案者に差し戻し、改訂履歴(版管理)で管理
承認後の軽微な誤記(紙記録) 元の記載を判読可能な状態で残し(二重線等)、訂正者の署名・訂正日、必要に応じ訂正理由を記載
承認後の軽微な誤記(電子記録) 上書きを禁止し、監査証跡(誰が・いつ・何を・なぜ変更したか)を保持。アクセス権限と版管理で担保
実質的な内容変更 単なる訂正として扱わず、変更管理・逸脱・CAPAの必要性を評価したうえで処理

※ データインテグリティ(記録の信頼性確保)の考え方は医薬品GMPの領域で先行して整理されていますが、医薬品GMPと医療機器QMSは別制度です。医療機器については、GMP省令の条文を根拠として引用するのではなく、QMS省令の文書管理・記録管理の規定と社内手順を根拠としてください(考え方の参考にとどめる、という位置付けです)。


4. ご質問②「兼務者ができること/できないことの線引き」

4-1. まず判断フロー(この順に考えます)

  1. その作業は ①形式確認 ②整合性の指摘 ③内容判断・承認 のどれか
  2. その人は、当該業務の 実施者・承認者 になっているか
  3. その人が、その後に 内部監査・有効性評価・完了判定 を行う立場か
  4. 法令上の責任者要件・報告経路(GVPの報告ライン、品質側の権限)に抵触しないか
  5. その割当と代償措置が 手順書・計画書・記録(監査証跡) に残っているか

4-2. 3つの原則

原則1:自分が実施・承認した業務を、自分が単独で検証しない QMS省令第56条およびISO 13485:2016 箇条8.2.4は、内部監査の客観性・公平性の確保を求めています。
※ 「監査員は自らの業務を監査してはならない」という文言がそのまま条文にあるわけではありません。客観性・公平性の要求から導かれる運用原則として理解してください。現行条文の正確な文言は省令原文で、ISO 13485:2016本文はISOの規格ページまたはJIS Q 13485:2018でご確認ください。

原則2:法令が定める責任者の要件・権限・報告経路を兼務で崩さない 安責は安全確保業務を遂行するための能力・権限・時間が確保されていることが前提です。文書校閲業務に追われてGVP業務が実質的に機能しない状態(いわゆる名義貸しに近い状態)は認められません。

原則3:兼務のリスクを評価し、代償措置と併せて記録する 兼務それ自体を一律に禁じる規定は、ISO事務局・推進役・内部監査員といった社内役割については見当たりません。「客観性が損なわれるリスクをどう評価し、どう低減したか」を文書化しているかが、調査・査察での実質的な論点になります。

4-3. 整理表(「不可」ではなく3段階で表記)

行為 判定 考え方
計画書・CAPA記録の誤記・記載要領の指摘 原則可 文書管理の一環。承認行為ではない
記載欄の整合性・記載漏れの指摘・差戻し・再提出確認 原則可 判断ではなく不備の指摘。手順書に役割を明記
文書番号付与・改訂管理・配付・回収・保管 原則可 文書管理そのものの職務
教育訓練の計画・実施・記録管理 原則可 法令上の制限なし
手順書・マニュアル改訂の起案・素案作成 原則可 推進役の職務
手順書改訂の最終承認 条件付き可(自分が起案したものは避ける) 起案と承認の分離。所管責任者・管理責任者が承認する設計が一般的
CAPAの根本原因の妥当性判断・是正措置の決定・完了承認 条件付き可。ただし利害関係の評価が必要 法令が特定役職に一律禁止しているわけではありません。当該CAPAの原因となった業務の実施者・承認者である場合、および後に自分が有効性評価・監査を行う場合は避ける。手順書上の権限と整合させる
内部監査の計画立案・日程調整・チーム編成・報告書の取りまとめ 原則可 監査マネジメントの役割
自分が起案した手順書・自分が管理する文書管理/教育訓練プロセスの内部監査 原則避ける(他の監査員又は外部監査員に割り当てる) 自己監査となり客観性を説明できない
安全管理業務(市販後安全)の内部監査 原則避ける(安責自身が自部門をQMS内部監査しない) 同上
GVP自己点検の実施 条件付き可(下記5参照) GVP省令では安全管理責任者が自己点検の実施者となる形も想定されています
監査所見(不適合)の最終判定を単独で決定 条件付き可/推奨は回避 一律の法令要求ではありませんが、管理責任者のレビューや複数監査員の合議を追加統制として置くのが実務上一般的

※ この表の「原則避ける」は、法令が明文で禁止しているという意味ではなく、客観性を説明できないために調査で指摘されやすいという意味です。法令要求と社内で採用する追加統制は、手順書上も分けて書いておくとよいでしょう。


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5. 安責の兼務とGVP自己点検について(重要な補正点)

「安責は自己点検を行えない」というのは正しくありません。 GVP省令では、自己点検は安全管理責任者又は製造販売業者があらかじめ指定した者に行わせることとされており、安全管理責任者自身が実施者となる形が一律に禁止されているわけではありません(適用条文は業態ごとに異なります)。

したがって、GVP自己点検については次を手順書で明確にしてください。

  • 実施者(安責本人か、あらかじめ指定した別の者か)
  • 点検の対象範囲(安全確保業務のどの範囲か)
  • 報告先(総括製造販売責任者への報告の経路)
  • 記録の作成・保存(点検結果、改善の必要性の評価、改善措置の記録)
  • 客観性の確保方法(安責本人が実施する場合、総括製造販売責任者のレビューを必ず通す等)

※ 一方で、QMS省令第56条の内部監査として安全管理関連プロセスを監査する場合は、安責本人が自部門を監査することは避け、別の監査員に割り当てるのが妥当です(GVP自己点検とQMS内部監査は別活動であるため、扱いが異なります)。

※ GVP省令の条文番号および関連通知の発出番号については、業態別に規定が分かれており、当社として正確な番号を断定することは控えます。GVP省令原文および所轄薬務主管課の指導内容をご確認ください。


6. 見落としやすい論点:国内品質業務運営責任者との関係

ご質問は安責に言及されていますが、医療機器製造販売業者の品質保証体制では、国内品質業務運営責任者(QMS体制省令:医療機器又は体外診断用医薬品の製造管理又は品質管理に係る業務を行う体制の基準に関する省令/平成26年厚生労働省令第94号)の責任・権限が中核になります。

CAPAの承認者を設計する際は、次の業務との責任分担を必ず整理してください。

  • 出荷可否の決定(市場への出荷の管理)
  • 製造所(登録製造所・外部委託先)の管理
  • 苦情・不具合情報の処理と、安全確保措置への連携
  • 回収に関する業務

安責(GVP側)と国内品質業務運営責任者(品質側)の情報連携経路を手順書で明記しないまま、兼務者がCAPAの内容判断まで一人で担うと、責任分担が不明確になり指摘対象となりやすくなります。


7. 人員不足のなかで「一般的にどう対応しているか」

中小規模の製造販売業者では兼務は普通に生じます。当局も兼務自体を一律に否定していません。実務では次の組み合わせで独立性を補完します。

(1)職務分掌表(責任権限マトリクス)を作る

役割×プロセスのマトリクスで、列を「起案」「形式・整合性確認」「内容承認」「検証(監査・有効性評価)」に分け、同一人物が「承認」と「検証」に同時に入らないよう設計します。品質マニュアルまたは組織・職務規程の附属文書として発行します。

(2)内部監査は「割当の工夫(クロス監査)」で対応する

  • 兼務者が関与するプロセス(文書管理・教育訓練・安全管理)は、別の監査員が担当する
  • その代わり、兼務者は他部門(製造、購買、設計開発等)を監査する
  • 兼務者は自分の担当領域では被監査者の立場に回る。この割当を内部監査実施計画書に明記する

※ 「監査員は最低2名」という法令要求はありません。1名体制でも、監査員の力量、客観性・公平性、監査範囲、レビュー体制を説明できれば差し支えありません(当社としては、客観性の説明が容易になるため複数名または外部併用を推奨しますが、これは法令要求ではなく実務上の推奨です)。

(3)外部リソースの管理された活用

兼務者の担当領域のみを外部監査員に委託する方法は一般的です。ただし、次を取り決めて記録に残してください。

  • 責任は移転しない:監査結果およびQMSに対する責任は製造販売業者側に残ります
  • 外部監査員の力量の確認(監査手法、適用法令・規格、製品リスクの理解)
  • 守秘義務契約と利益相反の確認(例:その手順書の作成を支援したコンサルタントが同じ領域を監査しない)
  • 監査範囲・報告先・記録の帰属、および是正措置の責任分担の明確化

(4)管理監督者・管理責任者による上位レビューを機能させる

  • 監査報告書、CAPAの完了判定を管理責任者または管理監督者が承認する
  • 管理監督者による照査(マネジメントレビュー)のインプットとして、「兼務による独立性の制約」をリスクとして議題化し、議事録に残す
  • 「人員不足だから仕方ない」ではなく、「制約を認識し、代償措置を講じ、経営が承認している」という記録が調査での説明材料になります

(5)監査員の力量を具体的に定義・記録する

「監査員研修を受講した」だけでは不十分です。次を評価して資格認定する運用が望まれます。

  • 監査手法(サンプリング、インタビュー、証拠の収集)
  • 対象プロセスの理解、適用法令・規格の知識、製品リスクの理解
  • 監査報告書の作成とフォローアップ(是正措置の有効性確認)の能力

(6)監査の「後工程」の独立性も設計する

割当の工夫だけでは足りません。所見の評価 → 原因分析 → CAPAの承認 → 有効性評価 → 完了判定の各段階で、同一人に権限が集中しないよう分担を決めてください。


8. 手順書への記載例(ひな形)

文書管理手順書 第○条(形式・整合性確認と内容承認の区分)

  1. 文書管理責任者は、提出された計画書及び記録について、記載要領への適合性、誤記・記載漏れ、文書番号・改訂番号・承認欄の充足並びに記載事項相互の整合性を確認し、不備がある場合は起案者に修正を依頼し、再提出を確認する。
  2. 前項の確認は形式及び整合性に関するものであり、記載内容の技術的妥当性の判断及び承認は、当該文書の所管責任者が行う。文書管理責任者は、起案者に代わって署名、押印又は日付の記入を行わない。
  3. 承認済み記録を訂正する場合は、適用する記録管理手順に従い、元の記載を判読可能な状態で保持し、訂正者、訂正日及び必要に応じて訂正理由を記録する。電子記録の場合は、上書きを行わず、監査証跡により変更履歴を保持する。
  4. 記載内容の実質的な変更に該当する場合は、訂正として処理せず、変更管理手順又は逸脱処理手順に従う。

内部監査手順書 第○条(監査員の客観性)

  1. 内部監査員は、自らが起案、実施又は承認した業務を監査しない。
  2. 前項に該当する領域は、他の内部監査員又は外部の監査員に割り当て、その割当を内部監査実施計画書に明記する。
  3. 外部の監査員を用いる場合は、力量の確認、守秘義務、利益相反の有無及び監査記録の帰属をあらかじめ取り決める。監査結果に対する責任は当社が負う。
  4. 監査所見の評価、原因分析、是正措置の承認及び有効性評価の各段階の責任者は、同一人に集中しないよう別途定める職務分掌表に従う。
  5. 監査員の割当における客観性の確保状況及び兼務による制約は、管理監督者による照査のインプットとして報告する。

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9. まとめ

ご懸念 回答
誤記・記載要領の指摘は薬機法違反か 通常、禁止されていません。 文書管理の正当な職務です
本当に注意すべき点は ①手順書と実態のずれ(誰が判断・承認したか)②記録の訂正・代筆のさせ方(紙/電子で方法が異なる)③内容判断の実質的な決定への踏み込み
原則として避けるべき兼務 自分が起案・実施・承認した業務を、自分が単独で内部監査・有効性評価・完了判定すること、および安責としてのGVP業務に必要な能力・権限・時間が確保されない状態
安責のGVP自己点検 一律に不可ではありません。 GVP省令に沿って実施者・範囲・報告先・記録・客観性確保方法を手順書で定めてください
人員不足時の一般的対応 職務分掌の明文化+監査割当の工夫(クロス監査)+上位者レビュー+外部監査員の管理された活用+監査員力量の記録+マネジメントレビューでのリスク記録化

参照した規制要件

  • QMS省令:医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令(平成16年厚生労働省令第169号) — 品質管理監督文書及び記録の管理、資源の管理(力量・教育訓練)、管理責任者、管理監督者による照査(マネジメントレビュー)、第56条(内部監査)、第63条(是正措置)・第64条(予防措置)
  • QMS体制省令:医療機器又は体外診断用医薬品の製造管理又は品質管理に係る業務を行う体制の基準に関する省令(平成26年厚生労働省令第94号)— 国内品質業務運営責任者の要件・業務等
  • GVP省令:医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品の製造販売後安全管理の基準に関する省令(平成16年厚生労働省令第135号)— 安全管理責任者、安全管理統括部門、自己点検(いずれも業態別に規定)
  • ISO 13485:2016(対応JIS:JIS Q 13485:2018)— 箇条5.5(責任及び権限、管理責任者)、箇条8.2.4(内部監査)、箇条8.5.2・8.5.3(是正措置・予防措置) → ISO 13485:2016(ISO公式ページ)

※ QMS省令の条項番号は改正を経ており、管理責任者・マネジメントレビュー等については条番号を特定せず、条文の名称で示しています。実際の手順書への引用時は、必ず現行条文の原文で条番号をご確認ください。当社として不確かな条番号を断定することは控えます。

※ 省令本文・関連通知(QMS省令の施行通知、逐条解説、GVP関連通知等)については、正確なURLに確証が持てないため、本回答ではリンクの掲載を控え、法令名・省令番号・条項名の明記にとどめています(推測によるURL掲載は行いません)。e-Gov法令検索で省令名を検索するか、厚生労働省・PMDAの通知検索で発出番号から原文をご確認ください。


免責事項および補足

  • 本回答は一般的な情報提供であり、個別の組織体制・業態(第一種/第二種/第三種製造販売業、製造業)・取扱品目のクラス分類によって結論が変わります。
  • 特に三役の兼務可否および安全管理責任者の要件は、所轄の都道府県薬務主管課の運用解釈が実務上の判断基準となります。組織変更の前に必ずご相談ください。
  • 条文の文言・条項番号について断定を避けた箇所(内部監査における自己監査禁止の明文の有無、GVP自己点検の該当条文、QMS省令の一部条番号等)は、原文でのご確認をお願いいたします。
  • ISO 13485:2016は著作権で保護された規格であるため、本回答では条項の趣旨の要約にとどめています。正確な要求事項は規格本文(またはJIS Q 13485:2018)でご確認ください。

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