No.96医療機器の附帯サービス業務
ご質問ありがとうございます。この論点は、一つの行為に見えて実は性格の異なる3つの行為が混ざっているため、まずそれを分解してから条文に当てるのが確実です。
0. 前提:3つの行為に分解する
| 行為 | 主に効いてくる規定 | |
|---|---|---|
| (A) | 当該個体の状態を確認し、点検・部品交換・オーバーホール等を行う | QMS省令第43条(附帯サービス)/第40条(製造及びサービス提供の管理)/修理業許可(法第40条の2) |
| (B) | その個体について「継続使用して差し支えない」と判断し、使用者に条件を通知する | QMS省令第43条第1項(要求事項への適合状況に係る検証)/GVP省令(安全確保措置)/法第68条の2の6(情報の提供) |
| (C) | 製品として設定した耐用期間の設定値そのものを見直す(製品レベルの延長) | QMS省令第36条(設計開発の変更の管理)/第26条第3項(リスクマネジメント)/電子添文の記載 |
ご質問の「製造販売業者の判断により延長して使用ができるよう調整整備する」は、実務上 (A)+(B) を指すことが多いと思われますが、これを製品の標準的な取扱いとして恒常化すると (C) に接近します。製品標準書に何を書くかは、この切り分けで変わります。
0-1. (B) と (C) の境界をどこに引くか
ここが実務でいちばん迷う箇所です。明文の基準はありませんので、以下は条文の趣旨から導いた実務整理としてお読みください。次のいずれかに該当し始めたら、(C)=設計開発の変更(第36条)として扱うのが安全側です。
| 指標 | (B) にとどまる | (C) に移行している |
|---|---|---|
| 判定基準 | 個体ごとに技術者が個別評価 | 判定基準を一般化・標準化し、満たせば一律に延長 |
| 対象 | 例外的・個別の個体 | 当該型式の相当数/原則として全個体 |
| 延長期間 | 次回再判定までの限定的な期間 | 年数として定義(例「+3年」) |
| 対外表示 | 個別の判定書のみ | 電子添文・カタログ・契約書に延長制度として記載 |
| 部品計画 | 手持ち在庫で対応 | 保守部品の保有期間を延長して計画 |
右列に一つでも入るなら、それは「製品の耐用期間の設定を変更した」のと実質的に同じであり、第36条第5項の「既に引き渡された製品」への影響評価を回避できません。
1. 結論
1-1. 製品標準書への記載要否
記載が必要と考えます。ただし、製品標準書(第7条の2)と手順書(第43条)では発動要件が異なるため、そこを分けて理解しておく必要があります。
| 条文 | 発動要件 | 求められるもの | |
|---|---|---|---|
| 製品標準書 | 第7条の2柱書+第六号 | 「正当な理由があるとき」を除き、常に | 附帯サービス業務に係る要求事項の記載 |
| 手順書 | 第43条第1項 | 附帯サービス業務の実施が「あらかじめ定められた要求事項である場合」 | 業務の実施及び適合状況の検証のための手順に係る体系の文書化 |
- 第7条の2柱書は「品質管理監督システムに係る次に掲げる事項(正当な理由があるときは、第五号又は第六号を除く)を含む要求事項を記載した文書」と規定し、第六号が「製品の供給に附帯したサービスに係る業務(以下「附帯サービス業務」という。)に係る要求事項」です。
- 逐条解説 13.(6)〔第7条の2(製品標準書)関係〕は「附帯サービスを伴わない医療機器においては、製品標準書や製品標準書の作成管理のための手順書等に附帯サービスが除外されること及びその理由を明記すること」としています。
つまり製品標準書の建て付けは「書くのが原則、書かないなら正当な理由を書く」であり、テストは「あらかじめ定められた要求事項か否か」ではなく「正当な理由の有無」です。耐用期間経過後の継続使用を支援する整備を現に提供する以上、「附帯サービスを伴わない」とは言えませんので、記載を省く正当な理由は立ちにくいと考えます。
なお (C) は附帯サービスの欄に書いて済む話ではありません。 耐用期間の設定値の見直しは設計開発の変更であり、第36条と第26条第3項の世界です。製品標準書の附帯サービス欄には (A)(B) の要求事項を書き、(C) の根拠文書(耐用期間の設定根拠、延長判定基準の妥当性根拠、リスクマネジメントファイル)への参照を置く、という二層構造にするのが実務上の落としどころです。
1-2. 法規制上の注意点(優先順)
前提として、耐用期間は薬機法上の「使用禁止期限」ではありません。理由は2つあります。
- 法構造として、薬機法が規制しているのは製造販売・製造・販売・貸与・修理といった供給側の行為であり、医療機関が手元の機器を「使用」する行為そのものは薬機法の規制対象ではありません(そちらは医療法の領域)。耐用期間を超えたら使ってはならない、という薬機法上の禁止規定は存在しません。
- 行政の運用としても、令和6年3月28日 医薬機審発0328第6号が耐用期間を「平均的な使用可能年数」と位置づけ、超過品の継続使用が現に存在することを前提に取扱いを示しています(後述2-1)。
したがって「延長」自体が違法という話ではありません。注意点は、むしろ次の順で効いてきます。
- 作業の性質が「修理」に当たれば修理業許可の問題になる(製造販売業の資格では代替できません。区分・事業所単位である点も要注意)
- 仕様変更を伴えば「改造」となり、修理の範囲を超えて製造業登録・承認/認証の問題になる
- 設計開発の変更管理(第36条)とリスクマネジメントの再評価が要る
- 電子添文の耐用期間と「その根拠」との整合、及び使用者への情報提供(法第68条の2の6、GVP省令)
- クラスⅣ機器で「保守・点検に係る事項」を改訂する場合は、注意事項等情報の届出(法第68条の2の3)の対象
- 中古として供給するなら施行規則第170条の事前通知ルート、及び第165条の品質確保
- 延長使用群の不具合情報の収集・分析・報告体制(GVP省令+QMS省令第55条の2・第55条の3)
2. 一次資料(条文・通知の原文)
2-1. 耐用期間超過機器の継続使用に関する行政の立ち位置 ★本件の中核
令和6年3月28日 医薬機審発0328第6号「中古医療機器の販売等に関する個別事案の取扱いについて」記1(厚生労働省医薬局医療機器審査管理課長通知)
※ 原本PDFで逐語照合済み
1 製造販売業者が定める耐用期間又は使用期間を超過した中古医療機器の販売等について 一般的に、医療機器やその主要な構成部品の耐用期間又は使用期間は、主要な構成部品の耐用年数等の条件を満たした場合における平均的な使用可能年数であり、実際の使用可能な期間は使用環境、使用方法等によって異なる。 医療機関においては、現に耐用期間又は使用期間が終了した医療機器を継続して使用している例がある。 中古通知2.なお書きの「リース契約等に基づき貸与する医療機器について、当該契約の満了後、同一使用者が継続して使用することとして所有権の移転のみが発生する場合」については、中古通知2.ただし書きのとおり「当該医療機器の継続した使用にあたり保守点検の実施等が求められる場合、製造販売業者とリース契約等に基づく所有者又は使用者の間において適切に対処」すること。 なお、耐用期間又は使用期間を定めた医療機器については、添付文書においてその根拠とともに記載することが求められる(令和3年6月11日付け薬生発0611第9号「医療機器の電子化された添付文書の記載要領について」)。耐用期間又は使用期間を超過したものの使用を制限する場合、医療機器の特性や安全性の観点から、製造販売業者は当事者間の認識に齟齬が生じないよう添付文書等への記載の検討や使用者への適切な情報提供を行うこと。
読み取れることは4点です。
- 行政は耐用期間を「平均的な使用可能年数」=目安と位置づけ、超過後の継続使用が現に存在することを前提としている
- したがって製造販売業者が個別に延長判断をすること自体は否定されていない
- 一方で、継続使用にあたり保守点検が求められる場合は製造販売業者と所有者・使用者の間で「適切に対処」せよとしており、製造販売業者が当事者として関与することを想定している
- 逆に、超過品の使用を「制限する」場合こそ、電子添文への記載検討と使用者への情報提供が求められる
※ この通知は中古流通(販売業者等からの事前通知)の文脈で発出されたものであり、自社ユーザーへの直接の延長サービスにそのまま適用される規定ではありません。ただし、調査した範囲では耐用期間の性格について当局の考え方を明示した一次資料は他に見当たらず、社内判断の根拠として引用価値があります。
2-2. 耐用期間の記載根拠
令和3年6月11日 薬生発0611第9号「医療機器の電子化された添付文書の記載要領について」(12)保管方法及び有効期間等
承認又は認証を受けた保管方法及び有効期間を記載すること。また、耐用期間又は使用期間を定めた医療機器においては、その根拠とともに記載すること。
(通知番号は、令和6年通知 記1 が本通知を引用していることでも独立に確認しています。)
2点に注目してください。
- 「定めた医療機器においては」という条件付きであり、耐用期間の設定自体は義務ではなく、定めた場合に根拠とセットで記載する事項です。延長するなら「根拠」も更新対象になります。
- 有効期間には「承認又は認証を受けた」が付されているのに対し、耐用期間にはその限定が付されていません。この書き分けは、耐用期間が承認/認証事項ではないことを示唆する手がかりですが、明示的にそう述べた一次資料は確認できていません(§6参照)。
2-3. QMS省令の関係条文
条番号は e-Gov 法令API で照合済み。令和7年厚生労働省令第117号による改正(令和8年5月1日施行)を反映した、本日時点の現行版(current_revision_status: CurrentEnforced)です。
第7条の2(製品標準書)
製造販売業者等は、製品又は類似製品グループごとに、品質管理監督システムに係る次に掲げる事項(正当な理由があるときは、第五号又は第六号を除く。)を含む要求事項を記載した文書(以下「製品標準書」という。)を作成し、これを保管しなければならない。 (略)五 製品の設置に係る要求事項 六 製品の供給に附帯したサービスに係る業務(以下「附帯サービス業務」という。)に係る要求事項
第43条(附帯サービス業務)
第四十三条 製造販売業者等は、附帯サービス業務の実施があらかじめ定められた要求事項である場合においては、当該業務の実施及び当該要求事項への適合状況に係る検証のための手順に係る体系を文書化しなければならない。また、必要がある場合には、参照する試料及び測定の手順についても、併せて文書化しなければならない。 2 製造販売業者等は、次に掲げる目的を達成するため、実施した附帯サービス業務(他者が実施した附帯サービス業務を含む。)の記録を分析しなければならない。 一 製品受領者からの意見が苦情であるかどうか判断すること。 二 品質管理監督システムの改善(第六十二条に規定する変更を含む。)のための工程入力情報とすること(当該改善が必要である場合に限る。)。 3 製造販売業者等は、附帯サービス業務を実施した場合(附帯サービス業務を他者が実施した場合を含む。)においては、当該附帯サービス業務に係る記録を作成し、これを保管しなければならない。
→ 第1項の「要求事項への適合状況に係る検証」が、まさに延長判定に相当します。判定基準・合格基準・測定手順を文書化せよ、というのが第1項の要請です。第2項=分析、第3項=記録の作成・保管という役割分担になっています。
第36条(設計開発の変更の管理)(
※ 「第37条」ではありません。第37条は購買工程、第36条の2は設計開発に係る記録簿です)
2 製造販売業者等は、設計開発の変更を実施する場合においては、当該変更が医療機器等の意図した用途に応じた機能、性能、安全性及び使用性並びに法令の規定等の適合性に及ぼす影響の有無及び程度を検証しなければならない。 (略) 5 製造販売業者等は、前項の照査の範囲を、設計開発の変更が、構成部品等、工程内の製品、既に引き渡された製品、リスクマネジメントに係る工程入力情報又は工程出力情報及び製品実現に係る工程に及ぼす影響の評価を含むものとしなければならない。
→ 第5項の「既に引き渡された製品」が本件の急所です。耐用期間の延長は、定義上すでに市場にある個体への影響評価そのものであり、第36条の照査を回避できません。
第26条(製品実現計画)第3項・第4項
3 製造販売業者等は、製品実現に係る全ての工程における製品のリスクマネジメントに係る要求事項を明確にし、適切な運用を確立するとともに、これを文書化しなければならない。 4 製造販売業者等は、前項のリスクマネジメントに係る記録を作成し、これを保管しなければならない。
第61条(データの分析)第2項第6号 … 分析に用いるデータに「附帯サービス業務の記録(附帯サービスの提供を行う製品の附帯サービス業務に限る。)」が明記されています。
2-4. 逐条解説 第43条関係(項番52)
平成26年8月27日 薬食監麻発0827第4号(平成27年9月1日 薬食監麻発0901第1号、令和3年3月26日 薬生監麻発0326第4号、令和7年1月31日 医薬監麻発0131第1号により一部改正)
- ここでいう「附帯サービス」とは、製品を製造し、供給することに伴い附帯するサービスをいうものであり、修理業務、保守業務のほか、例えば技術的助言の提供、ユーザーの教育、予備部品の供給等が含まれうるものであること。
- 法第40条の2の規定により、医療機器の修理業の許可を受けた者でなければ、業として、医療機器の修理をしてはならない(登録製造所に係る製造業者(設計又は最終製品の保管のみを行う製造業者以外の製造業者(施行規則第196条))が、自ら製造をする医療機器を修理する場合を除く。)こととされていることに留意すること。
- 手順書に規定されている方法により製品の修理をする際に、不適合製品を発見した場合においては、必要に応じて第60条の規定により適切な管理を行うこと。
→ 逐条解説自身が、附帯サービスの解説の中で修理業許可への留意を明記しています。前回のご回答で保留となっていた点の手がかりもここにありますが、法的な根拠規定は逐条解説(行政通知)ではなく政令です(下記2-5)。
2-5. 修理業許可まわり(前回の保留事項)
- 法第40条の2第1項には、ただし書きはありません。同項は「医療機器の修理業の許可を受けた者でなければ、業として、医療機器の修理をしてはならない。」の一文のみで、除外は政令に置かれています。
- 施行令第56条(医療機器の修理業の特例)「医療機器の製造業者が、自ら製造(厚生労働省令で定める製造を除く。)をする医療機器を修理する場合においては、法第四十条の二及び第四十条の三(法第二十三条の二の二十二の規定を準用する部分を除く。)の規定は、適用しない。」 → 括弧書きに注意してください。特例は全面的な適用除外ではなく、法第23条の2の22を準用する部分(遵守事項)は残ります。
- 施行規則第196条「令第五十六条に規定する厚生労働省令で定める製造は、医療機器の製造工程のうち設計又は最終製品の保管のみを行うものとする。」
- 除外の対象は「製造業者」であって「製造販売業者」ではありません。製造販売業の資格だけでは特例は使えず、また設計のみ・最終製品の保管のみの登録製造所も特例の対象外です。ここは実務で最も誤解されやすい点です。
- 修理業許可は、修理区分ごと・事業所ごとに与えられます(法第40条の2第2項、施行規則第181条及び別表第二。区分は第一〜第九区分を特定保守管理医療機器/それ以外の別に分けた構成)。既に修理業許可をお持ちでも、当該機器の区分・当該作業を行う事業所がカバーされているかは別途確認が必要です。責任技術者の要件も区分により異なります。
平成17年3月31日 薬食機発第0331004号(医療機器修理業に係る運用等について)
医療機器の修理とは、故障、破損、劣化等の箇所を本来の状態・機能に復帰させること(当該箇所の交換を含む。)をいうものであり、故障等の有無にかかわらず、解体の上点検し、必要に応じて劣化部品の交換等を行うオーバーホールを含むものである。 清掃、校正(キャリブレーション)、消耗部品の交換等の保守点検は修理に含まれないものであり、修理業の許可を必要としないこと。 医療機器の仕様の変更のような改造は修理の範囲を超えるものであり、別途、医療機器製造業の許可を取得する必要があること。
※ 引用文中の「医療機器製造業の許可」は平成17年当時の表現です。平成26年改正法施行以降、医療機器の製造業は登録制に移行していますので、現行では「製造業の登録」と読み替えてください。
3. 「調整整備」の中身による分岐 ★実務上いちばん重要
「延長して使用ができるよう調整整備する」の中身次第で、必要な許認可が変わります。同じサービスメニューの中に複数の性格の作業が混在するのが通常なので、作業項目レベルで棚卸しすることをお勧めします。
| 作業の中身 | 位置づけ | 必要な許可等 |
|---|---|---|
| 清掃、校正、消耗部品の交換、動作確認 | 保守点検(修理に該当しない/通知に明示) | 修理業許可 不要 |
| 劣化部品・故障部品の交換、解体点検を伴うオーバーホール | 修理(通知に明示) | 修理業許可 必要(該当する修理区分・事業所であること。施行令第56条の特例に該当する製造業者を除く) |
| 主要構成部品を新仕様品に置換、機能追加、ソフトウェアの仕様変更 | 改造(修理の範囲外/通知に明示) | 製造業の登録+承認/認証事項の変更手続 |
| パラメータ・設定値の再調整 | 通知に例示なし。個別判断 | 校正の範囲内の再設定か、仕様・性能に影響する設定変更かで結論が変わります。後者に寄るなら改造として扱う検討が必要 |
| 判定結果の通知、延長条件(点検周期・使用制限)の情報提供 | 附帯サービス(技術的助言) | — |
なお、耐用期間経過品の「調整整備」は、実態としてオーバーホールに近い作業になることが多いと思われます。その場合、QMS上は第43条の附帯サービスとして管理しつつ、業許可上は修理業(又は施行令第56条の特例の適用可否)を別途整理する、という二本立ての確認が必要です。
4. 延長する際の法規制上の注意点(チェックリスト)
① 耐用期間の位置づけの確認
- 耐用期間が承認書・認証書の記載事項に含まれているかを、当該品目の承認書/認証書の実物で確認してください。記載要領の書き分け(2-2)は「含まれない」方向の手がかりですが、これを一般則として断定できる一次資料は確認できませんでした。含まれている場合は一部変更承認/軽微変更届の要否判断が別途必要です。判断がつかない場合はPMDAへの照会を推奨します。
② 注意事項等情報の届出(法第68条の2の3)★見落としやすい
- 届出の対象製品はクラスⅣ(特定高度管理医療機器)に限られ、届出対象項目(令和3年2月19日 薬生安発0219第2号。令和6年7月9日 医薬安発0709第1号により一部改正)に「耐用期間」は含まれていません。耐用期間の数値そのものの変更は、同条の届出事由にはならないと読めます。
- ただし、届出対象項目には「保守・点検に係る事項」及び「取扱い上の注意」が含まれます。延長に伴って電子添文の保守点検事項(点検周期、延長使用時の制限等)を改訂する場合、クラスⅣ機器では同条の届出対象となり得ます。「耐用期間だから届出不要」で処理すると手続違反になりかねません。最新版の通知で対象項目をご確認ください。
③ 設計開発の変更管理((C) に該当する場合)
- 第36条第2項の検証、第4項の照査・検証・バリデーション・承認、第5項の「既に引き渡された製品」への影響評価を実施し、第6項で記録化
- 延長の技術的根拠:主要構成部品の寿命データ、故障率・フィールドデータ、加速試験、部品供給の見通し
- リスクマネジメント(第26条第3項、ISO 14971)の再評価:経年劣化に起因するハザード、故障率の上昇、部品枯渇リスク
- (参考)業界自主基準では「主要構成部品のうち修理・交換できない部品がある場合は、その中で最も短い部品の寿命によって耐用期間を設定する」とされています(JIRA自主基準第5版)。これは法令要求ではなく業界自主基準です。その上での私見ですが、この考え方に沿うなら、延長の技術的根拠として「制約となっていた部品が交換・更新されたこと」を示すのが説明として最も通りやすいと思われます。
④ 電子添文・情報提供・GVP
- 耐用期間を変更するなら、「その根拠」の記載も併せて更新(薬生発0611第9号)
- 延長の可否・条件(点検周期、使用制限、再判定の間隔、延長できない条件)について、当事者間の認識に齟齬が生じないよう記載を検討し、使用者に情報提供する(令和6年通知 記1)
- 情報提供の法的根拠は法第68条の2の6第1項(情報の提供等)です。製造販売業者は「適正な使用のために必要な情報を収集し、及び検討するとともに」医療機関・医療関係者等に「提供するよう努めなければならない」とされています。
- 本件は GVP 省令(平成16年厚生労働省令第135号)の領域でもあります。耐用期間超過個体について継続使用可と判断し条件を通知する行為は、安全管理情報の収集・検討を経た安全確保措置の性格を持ちます。統括するのは安全管理責任者であり、QMS側(国内品質業務運営責任者)だけで完結させないでください。条番号は貴社が第一種/第二種/第三種のいずれの製造販売業者かにより異なりますので、該当区分の条文でご確認ください。
- 特定保守管理医療機器のうち、法第63条の2第2項に規定する厚生労働省令で定める医療機器(=主として一般消費者の生活の用に供されるもの等、紙の添付文書等が要求される限定的な範囲)については、施行規則第226条により添付文書等への保守点検事項の記載義務があります。特定保守管理医療機器であれば一律に第226条がかかるわけではない点にご注意ください。それ以外の機器の保守点検事項は、記載要領に基づく電子添文の記載事項として整理されます。
⑤ 保守部品・サービス提供の継続コミット
- 保守部品の保有期間を「耐用期間まで」とするのは業界自主基準・契約実務上の整理であり、法令上の義務ではありません。
- とはいえ、耐用期間を延長すれば、部品供給・サービス提供の期待も事実上その分伸びます。契約上の期間、部品確保計画、供給できなくなった場合の出口条項を先に設計してください。ここを詰めずに延長すると、後から供給不能に陥り、かえって安全上の問題になります。
⑥ 中古として供給する場合
- 施行規則第170条第1項:「高度管理医療機器等の販売業者等は、使用された医療機器を他に販売し、授与し若しくは貸与し、又は電気回線を通じて提供しようとするときは、あらかじめ、当該医療機器の製造販売業者に通知しなければならない。」— 名宛人は販売業者等です。ただし書きにより、販売業者等の間での転売等は通知不要とされています。管理医療機器・一般医療機器には第178条第2項・第3項の準用を介して及びます。
- 同第2項:販売業者等は、製造販売業者から品質確保等の指示を受けた場合はそれを遵守しなければならない。
- 施行規則第165条:販売業者等は、適正な方法により、被包の損傷その他の瑕疵がないことの確認その他の品質の確保をしなければならない。
- 令和4年12月13日 薬生機審発1213第1号(通知様式)、令和6年3月28日 医薬機審発0328第6号(個別事案の取扱い)を参照。令和6年通知 記3のなお書きは、「中古通知2.なお書きの販売等」=リース契約等の満了後に同一使用者が継続使用し所有権の移転のみが発生する場面に限定して、稼働状況・保守点検実施状況にかかわらず一律に点検等を指示する運用を戒め、「必要な範囲で点検の指示が行われるよう適切な運用に努めること」としています。通常の第三者への転売では、製造販売業者が点検を求めることは制限されていません。この限定を踏まえた上で、延長判定基準を明文化しておくと「必要な範囲」の説明がしやすくなります。
⑦ 安全管理・記録の分析
- 延長使用中に生じた不具合は、GVP省令の安全管理情報として収集・検討したうえで、QMS省令第55条の2(苦情処理)、第55条の3(法第68条の10・第68条の11に基づく報告)へ確実に接続
- 第43条第2項の記録分析、第61条第2項第6号のデータ分析において、延長使用群を通常使用群と分けて傾向分析することを推奨します。延長判断の妥当性を継続的に検証する仕組みがないと、第36条の変更管理の妥当性そのものが揺らぎます
⑧ 医療機関側の対応との接続
- 医療機関は医療法施行規則第1条の11第2項第3号に基づき医療機器安全管理責任者が保守点検を実施し、機種別保守点検計画を策定します(平成30年6月12日 医政地発0612第1号/医政経発0612第1号)。
- 延長条件を文書で提供しなければ、医療機関は保守点検計画を立てられません。延長判定書に、次回再判定時期・点検周期・使用上の制限を明記して交付する運用が実務的です。
⑨ 民事責任・記録の保全
- 耐用期間を超えた個体について製造販売業者が継続使用可と判断する以上、その判断の根拠・実施者・判定日・有効期間を記録として残すことが、後日の説明責任の前提になります(第43条第3項の記録義務とも重なります)。
5. 文書体系への落とし込み(案)
| 文書 | 記載すべき内容 |
|---|---|
| 製品標準書(第7条の2第六号) | 附帯サービス業務に係る要求事項として「耐用期間経過後の継続使用に係る点検・整備・判定サービス」を規定。対象製品範囲、提供条件、除外条件、関連手順書・設計文書への参照 |
| 附帯サービス手順書(第43条第1項) | 点検項目と合格基準、延長可能期間の上限、再判定の周期、判定者の力量要件と承認ルート、使用者への通知様式、記録様式、記録の分析方法 |
| 設計開発関係(第36条・第36条の2) | 耐用期間の設定根拠、延長判定基準の妥当性根拠、変更の照査・検証記録(「既に引き渡された製品」への影響評価を含む)、設計開発に係る記録簿への反映 |
| リスクマネジメントファイル(第26条第3項) | 経年劣化ハザードの再評価、部品枯渇リスク、残留リスクの受容判断 |
| GVP手順書 | 延長使用個体の安全管理情報の収集・検討、安全確保措置としての位置づけ、安全管理責任者の関与 |
| 電子添文 | 耐用期間とその根拠、延長の可否・条件、保守点検に関する事項(クラスⅣは届出要否を確認) |
| 契約書・取扱説明書 | サービス提供範囲、部品供給の期限、免責、再判定の義務 |
6. 今回確認できなかった事項(正直に申し上げます)
- 耐用期間が承認書・認証書の記載事項に含まれるか否かの一般則を示す一次資料は確認できませんでした。記載要領の書き分け(2-2)は手がかりになりますが決定的ではありません。品目ごとの承認書/認証書での確認、又はPMDA照会が確実です。
- 「延長を認める場合」の電子添文記載を直接求めた通知は確認できていません。令和6年通知 記1が言及しているのは「使用を制限する場合」の記載検討です。延長側の記載は、同通知の趣旨(当事者間の認識の齟齬防止)からの敷衍であり、明文の義務ではありません。
- 記載要領の細則(旧 薬食安発1002第1号の後継と思われる通知)の原文は取得できていません。耐用期間の記載様式の細部を確認される場合は、細則の原本にあたってください。
- 逐条解説 第36条(設計開発の変更の管理)関係の現行版本文は取得できず、平成26年版のみ確認しています。
- JIRA自主基準は第5版(2017年5月26日)で確認しており、その後の改訂の有無は未確認です。同種の自主基準は業界団体ごとに存在し、改訂され続けているため、貴社の所属団体の最新版をご確認ください。
- QMS省令は本日時点の現行版で照合していますが、公布済み未施行の改正の有無までは網羅確認していません。文書体系の改訂計画を立てられる際は、e-Gov の改訂履歴もあわせてご確認ください。
- §0-1 の (B)/(C) 境界の指標、§3 の作業分類(通知に例示のあるものを除く)、§5 の文書体系案は、条文・通知に明文の根拠がある整理ではなく、実務整理です。
参考:確認した一次資料
| 文書 | 発出日・番号 |
|---|---|
| 医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令 第7条の2、第26条、第36条、第40条、第42条、第43条、第55条の2、第55条の3、第61条 | 平成16年厚生労働省令第169号(令和7年厚生労働省令第117号による改正・令和8年5月1日施行を反映した現行版) |
| 薬事法等の一部を改正する法律の施行に伴う…省令の改正について(逐条解説) | 平成26年8月27日 薬食監麻発0827第4号(平成27年9月1日 薬食監麻発0901第1号、令和3年3月26日 薬生監麻発0326第4号、令和7年1月31日 医薬監麻発0131第1号により一部改正) |
| 医薬品医療機器等法 第40条の2、第68条の2の3、第68条の2の6/施行令第56条/施行規則第165条、第170条、第178条、第181条・別表第二、第196条、第226条 | — |
| 薬事法及び採血及び供血あつせん業取締法の一部を改正する法律等の施行に伴う医療機器修理業に係る運用等について | 平成17年3月31日 薬食機発第0331004号 |
| 中古医療機器の販売等に係る通知等について | 令和4年12月13日 薬生機審発1213第1号 |
| 中古医療機器の販売等に関する個別事案の取扱いについて | 令和6年3月28日 医薬機審発0328第6号 |
| 医療機器の電子化された添付文書の記載要領について | 令和3年6月11日 薬生発0611第9号 |
| 注意事項等情報の届出等に当たっての留意事項について | 令和3年2月19日 薬生安発0219第2号(令和6年7月9日 医薬安発0709第1号により一部改正) |
| 医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品の製造販売後安全管理の基準に関する省令(GVP省令) | 平成16年厚生労働省令第135号 |
| 医療機器に係る安全管理のための体制確保に係る運用上の留意点について | 平成30年6月12日 医政地発0612第1号/医政経発0612第1号 |
| 医療機器の「耐用期間」の自主基準について(第5版) ※ 業界自主基準・二次資料 |
2017年5月26日 日本画像医療システム工業会 |
(確認日:2026年8月17日。本回答は同日時点で確認できた公開情報に基づく整理であり、最終的な薬事判断は貴社の総括製造販売責任者・国内品質業務運営責任者・安全管理責任者においてご判断ください。)